何故ダイヤモンドは輝くか



「なぁ爆。どうしてダイヤが輝くか知ってるか?」
 激が唐突に訳の解らない事を言い出すのは大して珍しくもないが、今日のこの発言は今までの中で群を抜いて可笑しい。
「それは……」
 爆は今まで蓄えた知識を総動員させて激の質問に答えるべく知能を巡らせた。ここで解らないと言おうものなら、どんな揶揄が飛ぶのか溜まったもんじゃない。
「ダイヤは、屈折率が高いから……」
「はっずれー♪」
 やーい引っ掛かかったvと悪戯っ子みたいに笑う。爆はむっとした。
「何で違うんだ!ダイヤは屈折率が高くて、吸収した光を全て反射するから輝くんだろうが!」
 爆の言い分に激はちっちっち、と人差し指をスライドさせた。
「違うね。いくら屈折率が高かろうが原石のままじゃ輝けねぇよ。ダイヤが輝くのは研磨されたからだ」
「詭弁だろうが!」
 爆は噛み付いた。その爆を見て激は子供だなーと声高らかに笑う。
「そこで」
 振っていた指をピッと爆へ向ける。
「どうしてダイヤは研磨されたと思う?」
「…………」
 今度ばかりはいよいよ質問の意図が掴めなくて、爆は怪訝な顔を禁じえなかった。
「美術品としての価値を高める為?違うな」
 長い足を組替える。
「昔々あると所に決して裕福とは言えないむしろ貧しい職工の男がいました。ある日、彼は自分の雇主の娘に恋をします。
 が、いかんせん身分違いの恋。当然雇主もおいそれと承諾する訳もありません」
 お伽噺口調で淡々と語る。
「雇主は条件を出しました。「このダイヤを研磨出来たら結婚を許そう」……どうなったと思う?」
「どうなったんだ?」
「教えて欲しかったらキス5回」
「……………」
「ごめんなさい。嘘です。だからサイコバズーカは仕舞って下さい」
 爆がかなり殺気立っているので激は敬語になった。
「で、続きは?」
「当時……どころか今でも硬度最高の宝石を磨くのは、殆ど不可能に近い事だったんだ。
 しかし彼はふと思いつく。鉄は何で磨かれる?鋼鉄だ。鋼鉄は何か?それは鉄だ。
 即ち鉄は鉄で磨かれる。ならばダイヤはダイヤで磨かれる。
 彼はこうしてダイヤを研磨する事が出来たんだ」
「ほぅ……」
「すげーよな。愛の力でダイヤも磨けるんだぜ?」
 感心する爆に身を乗り出して近づく。
「……貴様は何が言いたい?」
「だから、俺と一緒にその愛、育まねぇ?」
「嫌だ」
「何で」
「嫌なものは嫌だ!」
「何でぇぇぇ」
「いーやーだぁぁぁ!」
 二人の言い争いは何処までも続く……

 という訳で今日もダイヤは輝く。

この話は激が爆に告白して答えが返って来ない最中、という設定で。(ええいややこしい!)でも普通に会っているのが二人らしいというか。

ダイヤの研磨の話でもう一つ。ダイヤも全部が同じ硬度という訳でなくて、透明度が低い程硬いんだそうで。
つまり工業用に使われるダイヤは宝石に使われるダイヤより硬い、という事になるんで上手く出来てるなーとか思いました。