鏡を見る。 爆が今まで、見た事も無いヤツが居る。 これなら大丈夫そうだ、と鏡の中の人物は満足そうに笑う。 -----実は、この爆に似ても似つかない人物こそ、爆なのだった。
前日。 その日その時、カイは洗濯物を干していた。 「今日は晴れですから、早く乾きますね」 洗いざらしで真っ白な衣服を見て、ひと仕事を終えた充実感に、カイは額にかいた汗さえ心地よかった。 さて、これが終わったら、街へ買い物がてらのマラソンにでも……と、思っていた所。 「カイ!!」 「ば、爆殿!? あ、お久しぶりで………」 「匿え!!」 唐突に、テレポートで現れた爆に、戦きながらもしたカイの挨拶は、言葉半ばに掻き消えた。 ていうか。 「は?」 「聴こえなかったのか!匿えと言ってるんだ!!!」 「え、えと、爆殿?何かしたんですか?」 「されるんだ馬鹿者!! あーもういい!あいつらが来たらオレはあっちに行ってと言っておけ!それ以外は何も言うな!」 そうしてまた消えた。 ………えーっと。 何か言われたけど、何をどうすればいいのか…… カイが必死に整理して、まだそれも片付かない内に。 次なる一団が。 「なぁ、ホンマに此処で間違いないんか!」 「あったりまえだろう!!僕の爆くんセンサーは範囲無限大だよ!?」 「その割には煙に巻かれてるじゃないのよ!」 「それは爆くんは照れ屋だからさ!」 …………あー。 爆殿のさっきの意味、解っちゃったvv(しかも最も最悪な形で) 逃げよう。逃げてしまおう。 爆との約束を反故してしまうような気がするが、そもそも言いつけられた内容は自分が彼らに見つかったらの場合なので、故に相手が自分に気づかなかった場合は遂行する義務も無く…… 「あ!カイが居るで!」 「よし、尋問にかけよう!」 自分に言い訳をしながらくるり、と回れ右をしていたカイを、ルーシーが目敏く発見した。 そして、カイの運命は決まった。 まず雹にガ!と胸倉引っ掴まれ、その脇をルーシーとアリババが固める。 逃げ場は、無い。 「オイ!耳長!爆くん何処行ったか知らないか?!素直に教えないと生爪剥ぐぞ!」 「あっち!あっちですあっちに行きました!!」 カイは方向を指差し事に全神経を集中させた。生きるか死ぬかの瀬戸際だからだ。 「本当なんか?それは」 「本当です本当です本当です!」 カイは首を縦に振る事に意識と体力を総動員させた。五体満足で明日の太陽を拝みたいからだ。 「そーぉ?他に何か言ってなかった?アリババが好きだとか何とか」 「言ってません言ってません!」 カイは神に誓って断言した。ていうか事実だからだ。 「ふぅ……ん」 雹はカイを無遠慮に凝視した。まるで形の無い嘘を目で見つけるかのように。 だらだらだら。 カイは油を取られている蝦蟇の気分になった。 だらだらだら。 「………ま、いいや。僕と爆くんは運命だものvこんなヤツに聞かなくても、歩いてればきっと出会うさ!」 だったら最初から訊ねないでくれ!というカイの血の叫びは青い空と、3人が走る去る地響きに消えた。その後ろ姿を、呆然と見送るカイ。 た……… た……………… (助かった………) カイは神様にありがとうと感謝した。そもそも自分をこんな目に遭わせたのも、運命の神の悪戯である事を忘れ。 「行ったか」 ふと後ろを見れば、額に手を翳す爆がいた。どーやら今の今まで安全な所へ避難していたようだ。 「ば……ば……爆殿〜〜〜!!怖かったよ〜〜〜!!うわーん、怖かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「……そんなに凄まじかったか」 「えぐえぐ」 恐怖の醒めないカイは、しばし嗚咽を漏らす事しか出来なかった。 「よ。なんか賑やかになってんなぁ」 「激」 爆の登場からやや遅れる事、激もひょっこりその場に顔を出す……て。 「師匠!居たのに助けてくれなかったんですか!?(涙目)」 「これもまた試練……俺とて辛かったんだ」 嘘だな、嘘ですね、と、さも痛みを耐えるが如く唇を噛み締める芝居のかかった激を見て、2人は素直な感想を抱いた。 「いやー、この前の集まりの時になぁ、待ってても埒があかない。こっちから行く!って雹が言い出してよー。 それにアリババとルーシーが便乗してな。 ま、なるべくしてなった結果、てヤツ?」 「もう1週間もあの調子だ。どうにかならんか」 「そうですよ、どうにかしてくださいよ、師匠」 「どうにか……て、ねぇ」 当事者の爆より、カイの方が真剣な目つきだったのは、先程の体験のなせた業だろう。 それはさておき、激は考える。 生半可なものじゃあいつらを退けるなんて出来っこねぇしな。かといって威力のある技を人にぶつけるなんて爆がする訳ねぇし。 とは言え、爆の周囲をうろつく輩を野放しにしたままってのは、俺も好ましくないし……でも俺が相手をするのは嫌だし…… 「お」 考えるというか、我が儘な欲求を並べていた激の脳裏に、ピッカーンと豆電球が光る(古臭い表現) 「いい案でも出たか?」 「おうともよ! 爆、オメー御形術習いな」 「御………?」 「よーするに、変身術だ。オメーが”爆”と解らなけりゃ、誰も追ってこない訳だし。 何、技を一日で覚えたオメーだ。大して時間は取らねぇって」 相手に何かするのではなく、自分に対して施す。逆転の発想というヤツだ。 「……理には適っているが……何だか逃げるようで好かんな」 爆はあまり乗り気ではないようだ。 が。 「いえ爆殿!それが最善の方法だと思いますよ!!さぁ習いましょう今習いましょう! お願いですから習って!!!」 「…………………」 途中から懇願に変ったカイの意見もあり、結局爆は手解きを受けた。
で。この成果である。 激の言う通り、覚えるのはさほど苦にはならなかった。 (あまり気が進まなかったが……やってみると面白いな) 変化した自分の顔を、ぺしぺしと頬を叩いたり、軽く抓ったり。 何より、自分の長さではない髪の感触があるのが驚きだ。
「いいかー、爆。今から教える御形術は正確に言うと御形術じゃねぇ。 常に目くらましの気を羽織って、相手に自分とは違う姿を常に錯覚させる術だ。どっちかというと、幻術の方が近ぇかな。 骨格から筋肉まで変えるヤツは時間も負荷もかかり過ぎるからなー。こっちの方がいいだろ」 「まぁオレも本格的に学ぶ気はないからな」 「ただし!ここで注意が一つ!」 ピ、と激は人差し指を立てた。 「身体じゃなくて精神に影響を及ぼす術なのはもう解ったな? だから、オメーだとバレちまうと、その相手にゃもう効かなくなっちまう。 それだけは気ぃつけな」 「解った」
だから、この髪は現実には無いものだ。 ”ある”と思い込まされている為、感触すらも生み出す。 「……………」 爆は鏡の中の人物に向かい、念じてみる。 これは爆だ。これは爆だ…… すると、身体のフォルムがぶれ、波立った水面に写った影のようになり、それが収まると鏡の中にいるのは、ちゃんとした”爆”の姿だった。 それにほほーと感心し、荷物を背負った。 さぁ、今日は何処へ行こう。
爆が向かった先は、伝統と格式の国、フォスだった。 優雅に身体を休ませたい時には、此処に限る。 カツコツと、石畳の上を走る馬の蹄が心地よく耳に響く。 それにしても、と爆は周囲を窺う。 (……何かあったのか?) 一見和やかな城下町だが、旅人や商人に紛れ、確実に技に覚えがありそうな者が混じっている。気配から、ならず者というより、それを取り締まる方のようだった。 それと解るような紛争をしないのは、極秘の任務か、あるいは民間に不用意な恐怖を撒き散らせない為。 ここを治める仲間を思い出す限り、後者の可能性が高いな、と爆は人知れず頬を緩ませた。 自分以外の仲間達は、どうやら定期的に会合を開いているみたいだ。ピンクがしつこいくらいメールをくれるから知っている。 自由気ままな性分に任せて、顔も覗かせていないが……今度は出てみようか。別に意識して行かない訳でもないのだから。 と、考え事をしていたせいか、前から来た人に避ける事が出来なく、軽く接触してしまった。 「あ、すいません」 「いや、こっちも………」 素直に非を詫びた人物は、爆の知っている、というか、今まさに思っていたダルタニアンだった。 記憶の中の彼より、とても成長して大人びてて、責任感に溢れている。 「………・何処か、痛みましたか?」 そう言われて、爆が自分の今の姿を思い出した。 そうだ、御形の術をかけていたんだ。 見知らぬ人が顔をじっと見ていたら、そんな風に思うだろう。 「すまん。何でもないんだ。 ところで、今日は何か物騒な事でも起こったのか?」 「………!解りますか」 感心したように、ダルタニアンが言った。そしてやや声のトーンを落とした。 「……実は、僕の異国の知り合いから、僕らが追っている共通の敵がこの国に来ただとかで連絡が入りまして。 あ、でも心配はしないでください。実害は無い……とも言い切れないですが、でも、少なくとも普通の人には手は出さない……というか、相手にもしないというか。 何れにせよ、貴方も怪しい人を見かけたら、側の警備兵に遠慮なく言ってくださいね」 「あぁ、解った」 「では!この国を楽しんでください!」 側にあった馬、どうやら、これに乗る為に、此処に来て爆にぶつかってしまったらしい。それに跨り、颯爽と駆け去った。 変装して、最初に会ったのがダルタニアン、という事に、爆は皮肉さを感じた。彼だったら、自分の機嫌にお構いなしに纏わり付くような事は決してしないだろうから。 正体を明かしてもよかったが、連日の押しかけに少々参っていた爆は、一人でのんびり寛ぐことを選んだ。 昔は一人で居る時は常にピン、した糸を張り巡らして、周囲をいつも警戒しているような気持ちでいたが、今は全く逆だ。一人でいると、気が和む。 それは仲間が居るからという自覚あっての事だろう。皆が居るから、一人も心地よいなんて、少し矛盾しているような気もするけど。 「……………」 仲間の事を思い出すと、決まってその向こうの、一番始まりの人物に行き届く。 自分の夢を志す場所は決まったらしい。 だから、今はそれに勤しんでいる……筈だ。時折ひょっこり顔を出すが(そしてその度現郎が連れ戻す)。 どうしているだろうか。 何か事件に巻き込まれてはいないだろうか。事故には遭ってないだろうか。自分の道をちゃんとすすんでいるだろうか…… いつの間にやら、心配事で埋め尽くされてしまった頭を、軽く振った。 そんな訳がない。アイツはアイツだ。だから、大丈夫だ。 表通りをただ歩いていた爆は、一際大きな街道に出くわす。規模が大きくなると、人もそれに伴い多くなる。 まだ1人で歩く分には何も困らないが、誰かと付き添ってでは、相手と逸れるかもしれない。 ふと、そんな時。 (------あれ?) 向かいから来る、人の波に、あの赤い色を見つけたような気がした。 名前を映した、綺麗な緋色。見事な色彩。2人と居るとはあまり思えない。 人の頭や影に隠れて、ちらちらと現れる。とてもまだるっこしい。 立ち止まってよく見極めようと思ったが、此処は人の多い大通りだ。 後ろから次々と来るというのに、歩くのを止める訳にいかず、自分より大柄な人も大勢いるので、いよいよ見失ってしまいそうだ。 そうしていると、隠れ隠れに見えていた赤色が、急に見えなくなった。 見失ったか……と思ったが、その付近に狭い通路を見つけた。 (……あそこか?) どうせ予定も立てていない1日だ。 ダメで元々、と行ってみる事にした。
そこは裏通りといえばそうなのかもしれないが、お国柄、そんなに治安が悪いとは雰囲気でも思えなかった。 ただ、人の気がなくて、空気にひっそりとした物を感じるくらいだ。 これが、ゴイ辺りだったらこうもいかないだろうな、と、それに付随して思い浮かべてしまったアリババに、顔を顰めた。 あんなに毎日毎日会いにきて、一体何がしたいんだ? そう思って。 自分を振り返ると。 ………そう言うと自分は、こんなに一所懸命炎を探して。 一体何がしたいんだ? 「……………」 理由を探してみる。 探して、でも、見つからなくて。 見つからないというか……まるで、それの答えは仕掛け時計みたいに、時期が来ないと動かないような物に思えた。 そんな風に感じる事が、最近多い。 それも、炎が絡む事で。 (何で、オレの中の事なのに、オレが解らないんだ?) 爆の場合、元々のプライドの高さも手伝い、意地でも答えを見つけてやる、と疑問を掘り下げた。 (炎と会って、まず、話すだろ。今まで何をしたかとか、何をしようと思っているとか…… それで、話が終わったら……終わったら……) 終わったら、速やかに帰るべきなのだろうけど。 だけど。 それは模範的な回答で、自分の求めるものでなかった。 炎と会って、それから、それから。 見えかけた答えは、手触りだけを残して、また奥に引っ込んでしまった。 炎と会えたのなら、もっと解るのだろうか。漆喰の壁に背を凭れて、爆は考える。 「………行き止まりだった………」 呟くような声が聴こえた。おそらく、それは独り言だったのだろう。 通りを外れたこの道は、地面がむき出して、それを踏みしめる音が耳に届く。 足音が近くなって、大きくなる。自分の中で響いているみたい……いや。 本当に響いている。 鼓動、だった。 心臓が動いていると解る程に、ドクドクと脈動する。 カーブを描いているこの道は、その先は見えない。 ちらり、とあの色が見えたような気がした。。 錯覚……? 違った。 本物、だ。 炎、だった。 「…………」 炎はやれやれ、と、道を引き返すはめになった面倒の為か、行儀悪く服のポケットに両手を突っ込んでいた。 狭い路地裏。どうやっても、爆は炎の視界に入り込む。 ぴたり、と、湖面よりも色の濃い、けれど透き通った蒼い蒼白が自分に留まる。 そして思い出した。今、自分は”爆”の姿をしていないのだ。 「あ………」 その訳を話して、自分は爆だと言わないと、早く言わないと炎が行ってしまう。 強迫観念に近い感情に見舞われて、言葉より先走った手虚空にが伸びた。 と。 「……爆?」 「………ぇ………」 「爆、か?」 自分の眼をひたりと見据えて、炎がそんな筈が無い、と思いながらもきっとそうだと思っているような、不思議なイントネーションで訊ねる。 しかし、それは事実だ。 炎の眼が顰められる。おそらく、朝、自分が鏡の前で行ったような現象が炎に起こっているのだ。 「-----爆!やっぱりそうだった!」 ぱぁっと顔を輝かす、炎。その表情に、爆はかぁぁぁぁっと心の中が熱くなる。 (な、何だこれ?!) 熱いけど、汗はかかない。 「それにしても、どうしてそんな姿を取っていたんだ?」 「そ……それは………」 言葉も、何か上手く出ない。 炎の顔も、なんだか見ていられない。 炎と会ったら話をして、それから。
それから。
「あぁ、さては雹が誰かに纏わりつかれているんだな?相変わらずだな、お前は」 「…………」 自分と格闘している爆に気づいていないらしい炎は、1人で話している。返事を期待しているのだろうが。 「……爆?」 いつまで経っても黙ったままの爆に、炎も訝り始める。 「どこか、具合でも……」 近寄っただけの空気の振動にも敏感になったのか、戦いて爆は後退る。しかし狭い道。すぐに背中は支えた。 何で、炎から逃げてしまったんだろう、としきりに首を捻る爆。 そんな爆より先に、爆の事を感づいている炎は、成る程、と意地の悪い笑みを浮かべた。 たん、と爆の顔の両横に手をおいて、さりげなく逃げ場を封じた。 「な、何だ?」 「話をする時は、相手の目を見ないとな?」 「だっ……だけど、近い!近過ぎるだろうが!」 「お前が逸らすからだろう」 ああ言えばこう言うというか。正論とは程遠い論法で、しかし確実に爆を追い込む炎。……物理的にも。 何だかんだで、炎と爆の顔の距離は、本一冊分くらいになってしまっていた。 それでもまだ近づいていて、最終的には………… 頭の中ではどうなるのかが解っているのに、身体が動いてくれない。 いや。 動いてくれないのは、心の方だ。 何故、と自問自答している間にも、炎は顔を寄せるのを止めない。 「……………」 覚悟を決めた、という訳でもないけれど、爆は眼を綴じた。この場では、そうするのが一番良いと思ったからだ。 それが正しいと示唆するように、炎の手が優しく髪に触れた。 そして。 それから。 ついに。
「居た------------------------------------------!!!」
通路全体を振動させるような声。 勿論、炎でも爆の声でも無い。 その叫びに、爆は夢から醒めたようにはっとなった。 「ちッ!もう来たか!」 「え?来た?何が???」 「ダルタニアン様、此処です此処に居ました!!」 「居たか!」 パカラッ、パカラッ、パカラッと颯爽と馬に跨り来たのは、徳川八代目暴れん坊将軍……ではなく、名前を呼ばれたダルタニアンその人である。 「あ?あれ?ダルタニ………」 「爆」 ひたすら状況が解らなくて、ひたすら混乱しつづける爆に、炎は。
額に流れるように掠めた、軽い感触。と、熱。
「………………-------?今………?」 「またな、爆」 「追え-----!逃がすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」 私服、制服の傭兵達が、炎の後を追い掛ける。 ………一体何がどーなってるんだ? 誰か説明してくれ……と爆は佇んだ。 「あ!貴方は先程の!」 馬から降りたダルタニアンが駆け寄る。 「大丈夫ですか!?お怪我は!?」 「いや、無い……と、言うか、今のは何だったんだ?」 「はい、実はさっき言った僕が捕まえたい、って言ってた人が、彼なんです。 あまり詳しい事が言えないですけど、昔とんでもない事をやらかしましてね。 そして今は、遠くに行ったにも関わらず、度々戻ってきては僕の憧れの人にちょっかいをかけるんですよ!」 まさかその憧れの人当人に話しているとは露知らず、ダルタニアンは憤慨する。 「で、仲間達と協定を結んで、あいつを見つけ次第追い払って、その人には近づけないようにしようって…… はッ!こうしてはいられない!少し失礼します!」 ダルタニアンは袖を捲り、ウォッチを露にした。ピ、ピ、と何か操作した。 「-----あ!アリババさんですか!?こちらフォスのダルタニアンです! ターゲットを確認しました!そちらに向かっていると思われます!至急、第二種……いえ、第三種警戒網を張ってください!僕も今から行きますので!」 ラジャーとアリババの声がウォッチから響いた。 「それでは!」 そして、またパカラッパカラッパカラッと去って行った。 ………………… 何かとんでもない事に……と言うか…… 「炎……あまり驚いてなかったな………」 そうすると、今までに何回かあったという事か。 …………… 「懲りろ。お前は」 何処にいるかも解らない、炎に向かい、ぽつり、と呟いた。
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