「なっ………!」
炎は慟哭した。それはもう、激しく。
何故だっ!何故……!!
「テレポートが行えないんだ……!?」
「説明が欲しいですか、炎様」
ひたすらうろたえる炎に、静かに言ったのは現郎だ。
「現郎!どういう事だ!?何か、俺に異変が!?」
「落ち着いて下さい。変りがあったのは貴方じゃありません。この部屋の方です」
「部屋。………!」
炎がは、とする。
つまり、バリヤーのようなものを張られたのだ。瞬間移動が出来ないような。
しかしそうなれば話は早い。ここで無ければいいのだから。
炎がにや、としたのが現郎にはとても解った。何せ長い付き合いのだから。
現郎はそそそ、と静かに部屋を出て、がちゃりと冷静に鍵を掛けた。
「……現郎?」
「炎様。冷蔵庫に食材を入れておきました。ざっと3日分」
「…………」
ドア越しに会話する。
「ちなみにこの部屋、鍵は感情ですが最ももろい素材で作ったので、ドアを無理やり壊そうとしようものなら部屋ごと崩壊されますので。瓦礫に潰されたくなければやめておいた方が無難ですよ」
「……お前ー!主に対してこの仕打ちはなんだー!」
「でしから、主ならそれらしい事をしてくださいと、何度も仰ったでしょう」
では、そーゆー事で、と現郎はその場を去った。何か炎が叫んだようにも思えたが、ドア越しだったからよく聞き取れなかった。
「て訳でよーやく休暇もぎ取って来た」
はーやれやれ、と激の家の椅子にどっかり凭れる現郎。
「自分の主人軟禁してお出かけたぁ、オメーも成長したよなぁ」
以前だったら想像も出来ない、と激豪快かつ楽しそうに笑った。
「どうも炎様は、俺に甘えているような節があるからな……これを機にきっぱり自立してくれたらいいんだが」
「でもよ。お前から自立したら、その分爆の依存に注がれるんじゃねぇの?」
「…………」
そこまで考えが至らなかったのか、沈黙した現郎だ。
と、その時カイが慌しく部屋に駆け込んできた。
「おー、どうした?」
「あ、師匠!あぁ、現郎さんも!」
あわあわと挨拶をし、自分の得物を取るカイ。
「爆殿が炎殿に拉致されたと、ハヤテ殿から連絡がありましたので!」
と言い捨て、駆けて行った。
「……………」
「……………」
残った2人はしばし黙り込み。
「……レベルアップしちゃったな」
「…………」
ぼそ、と激が呟き、その後2人も向かう。
爆の奪還と、炎の捕獲へ。
<END>
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