昔々という訳でもありませんが、炎という青年が居ました。
ある日雨の日、炎が外を歩いていると、小さなダンボールに入ったとても小さな仔猫が居ました。
仔猫は冷たい雨に濡れ、声はとても弱々しく、今にも息絶えてしまいそうでしたが、炎の献身的な世話もあり、家のカーテンに悪戯出来るくらい元気になりました。
またある日、元気になった筈の仔猫がまた元気がありません。好きな物を上げても、何処か、何か考えるみたいに頭を垂れています。
そして、満月の夜に姿を消してしまいました。
さらに次の満月。
1人の少年が炎の前に現れました。炎は瞳を見て、それが誰なのかがすぐに解りました。
そうして2人は幸せに暮らしたという事です。
めでたしめでたし。
「-----とかいう夢を見たのだが、これは一体どういう事を暗示しているんだろうな」
どういうもしょうゆうも、そのまんまじゃないだろうか、と現郎は素直に思う。
「で、炎様、それ何時見た夢なんですか?」
「昨日----今日かもな」
「じゃぁ、それが初夢って事になりますね」
「そうなるな。……となると、いよいよ意味が気になるな……」
だからそのままだって、と現郎がまた思う。
「とりあえず、それ、爆には言わない方がいいと思いますよ」
「何故だ」
いや、何故って。
真顔で尋ねる炎に、あほかアンタはとも言えない現郎だ。
良くも悪くも、炎は何だかんだで純粋なんだろう。良くも、悪くも。
「とりあえず、言わないでおいてくださいね」
「……あぁ」
釈然としない表情をしているが、承諾はしてくれたようだ。
何か揉め事があると、自分が巻き込まれちゃんだからなぁ、と現郎はそっと溜息をついた。
どうせまた食べる物もそこそこに世界中飛び回ってるんだろうな、と思った炎は街で適当に買い込んだ。
と、雨がぽつぽつと降ってきたので、傘もついでに買った。晴天が思い出されそうな青い色のを、1つ。
気配を感じた森へ行くと、雨宿りによさそうな大樹が立っていた。
その根元に、当たり前のように爆。
葉の間からぽたりぽたりと垂れる滴を避ける為か、身体を縮ませている。髪も湿ってぺたんとしていた。
何だかデジャヴを感じながら、炎は爆の元へと向かった。
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