泣くのを長い間堪えたせいか、涙は出なくなった。
それと特に何かと思ってはいなかったが、今はそうで良かったと思う。
でなければ、一晩中泣きっぱなしだった。
泣けない自分で良かった。
でも、以前は泣いていた。
その自分は、何処へ行ってしまったんだろうか。
誰かに側に居たいと思う気持ちを、無くしたと思ったのに、カイを好きになったみたいに、やっぱりまだ。
何処かで眠っているんだろうか。
08.星憑り
爆に会わなければ、謝らなければ、と思っている内にまた1ヶ月が過ぎてしまった。
未だに謝罪も和解も、それどころか会ってすらいないのだが、行かない訳には行かない。
義務とかじゃなくて、自分が行きたいから。例え、後で怒られるとしても、それでも顔を拝みたいのだ。
自覚したのは、先日爆に辛辣な言葉を浴びせられてからだが。
それでも、こんな朝とも夜ともつかない時間に、わざわざ起きて行ったのは。
多分、そういう事だった。
そして満月の日が来た。その日は、いつもより早く起きた。殆ど眠れてなかったのかもしれない。
いつもより大分時間は早いが、もう行く事にした。居なければ、待てばいいんのだし。
しかし、やっぱり爆は先に居た。
何時頃に来るんだろう、と今更に思う。
「爆殿……」
呼びかけて、いつもと様子が違うのに気づいた。
いつもなら、来ただけで自分に気づき、明るい笑顔を惜しげもなく浮かべ、自分へと、時には抱きつき振り返るのだが。
今日は、無反応だった。
正常の爆は、この時の記憶があるというから、実はそれは相互で今の爆にも変化を齎しているのだろうか。
……それが、爆の精神を壊すようなものではなければいいけど。
ふいに浮かんだ不吉な可能性を、早くに頭から弾き出す。
その時、何かきら、と光るものが爆から落ちる。
「爆殿」
ゆっくり、覗き込めば。
爆は、泣いていた。
「……………」
ぽたぽたと涙だけ零す姿は、本当に泣いているだけと言った感じで、なんとも痛々しい。他者に訴えるようなものでないのだから、尚更だ。
「…………
貴方は、哀しい人ですね……」
感情を抑えて抑えて、こういう風でしか、泣く事すら出来ないなんて。
でも。
そういう所すら、愛おしい。
本当はどっちでもいいのだ。この爆でも、昼の爆でも。だって両方とも爆だから。
もっと早くに自覚していれば、こんな風に泣かす事も無かったんだろうか。
カイは爆の顔をそっと上げさせ、キスをした。
自分の方から。
至近距離の涙は僅かに光を放っているようで、闇を少し残す空に、流れ星のようだった。
<To be continued>
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