”君の指 花びらを撫でてたろう
僕は思う その仕草 セクシーだと”
シカマル、前にサボテンの花って生で見た事ねーって言ってただろ。
明日の夜当たり、オレのサボテンが花咲きそーだから、良かったら来る?
と、言われるままに手土産持参でナルト宅に到着。
そこで俺は驚愕の事実を知ることとなった。
「………1人暮らし?」
「あれ?シカマル知らなかったっけ?」
知らねーよ。まぁ、持ってきたのはあられやせんべえの詰め合わせで、ご家族用サイズだけど、日持ちするから良かったよな……て、そうじゃねぇ。
そうか……だから、いのが妙に眼を輝かせてやったわね!とかナイスガイな親指立てて見送った訳だ……
……いくら何でも、男の俺が女のナルトと2人きりなるってのは……
まずいよな。うん、やばい。
こりゃ、帰るかー……
「なぁ、ナル……」
「さぁ!早く晩飯食べてさくっと寝るってばよ!花咲くの夜明けだから、3時に起きるの!」
「お、おい……っ?」
ぐいぐいと腕を引っ張られ、半ば所か無理やり室内に入っちまって。
テーブルに並んだ、2人分の食事を見て、それでも帰るって言うヤツが居たら、是非見てみたいもんだ。
それを承諾してしまうコイツ相手だから、尚更な。
そんな訳で、今はこうして布団を並べて寝ている。いや、俺は寝てねーけどナルトはそれはもう豪快に寝ている。
隣にナルトが居てドキドキしていて寝られない、っていうシチュエーションを考えていた人には申し訳ない。俺は、突然降ってきたナルトの腕で強制的に起こせられた。
腕を定位置、本来あるべき場所に戻し、在らぬ方向へ飛ばされてしまった布団をかけてやる。
女は特に気配に敏感で、好きな人以外の前じゃ、安心して寝てなんかいられない、と、物語か論文かで書いてあったような気がすっけどな。
それとも、こいつ、女じゃないんだろうか。男っつー意味じゃなくて、まだ少女つーか、女の子ていうか。恋人と付き合うより友達と遊んでいたい。そんな年頃。
可笑しいな。フツー女は男より早熟の筈なんだが。
法律だって、男は18歳だけど、女は16歳で結婚出来る。ま、結局他人が作ったものだって事か。
さて。午前3時。
案の定、ナルトは起きない。一生懸命仕事をしている時計のアラームが哀しい。
「おい、起きろよ、オイ」
「ん〜………」
あと5分、とか言いたげな感じだ。
「一楽で奢ってやるぞー」
「え!マジ!?」
……冗談半分の棒読みでマジで起きるかよ。
ナルトは暫く、何で自分が起きたか解ってない様子だったが、目の前のテーブルにあるサボテンを見て合点がいったようだ。
「わー、凄い蕾膨らんでるってばよ」
「だなー」
うっすらと色らしきものが見える。赤色だった。
しげしげと観察していたら、ナルトがカップを持ってきた。
「フレッシュ・ライムミントティーだってばよ」
そう説明して貰えなければ、お湯に緑色の葉っぱが浮いているようにしか見えない。
ナルト曰く、新鮮な葉っぱなら、紅茶みたいに茶漉しで淹れる必要はないそうだ。それより驚いたのは、使われているハーブをナルトが育てたって事だ。
「スペアミントとアップルミントが入ってんだ。ペパーミントもいいけど、あれはちょっと辛いから、料理に使うんだってばよ」
「へー……」
俺のはそうじゃないけど、ナルトのははちみつ入りだ。優しい、甘い香りがした。
それからしばらくして。
サボテンの花が咲いた。
と、文にしてしまえば、たったそれだけの事。つまり、文字に出来ない事が多すぎるって訳だ。
「シカマル」
ナルトがに、と笑う。カップを掲げ。
俺もカップを持ち上げ、どちらともなく言う。
「乾杯」
かつん、とカップがぶつかった。
さらにもうしばらくして、あんなに、小さかったけど、凛と咲いていた花は萎れてしまった。
「枯れちゃったってばね」
どこか無機質なナルトの声。
頬杖を付き、枯れた花を指先でそっと撫でる。
その仕草を見て、俺は。
やっぱりナルトも、俺より2年早く結婚が出来るんだ、と。
そう、思った。
<END>
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