SUMMER GATE





 祭りの時間はいつもより絶対早く進んでる。
 夕方来たってのに、あっと言う間にもう夜だ。
 普通だったら、子供が夜に外出たら、大人は怒るってのに、此処に居るのは子供の方が多い。
 不思議。つーか、楽しい。
「サスケ!9時から花火やるって!」
 花火の写真を前に出したポスターが、貼れる所に貼られていた。
「みてーだな」
「楽しみだなーv」
 楽しみだけど。
 花火、もの凄いみたいけど。
 その時は、今、ワクワクしてるのが終わるって事で。
 それは、ちょっと寂しいかな。
 



 花火まであと2時間くらいあるんで、それまで時間を潰す。
 潰す、ていうか、勝手に時間は過ぎてくれる。
「サスケ、蝦蟇の油売りって無いかな」
 エロ仙人が、あれが無けりゃ祭りじゃないとかいつも言ってるから、是非見てみたい。
 でも、近所の祭りにはなくて、こんなに広いから、あるかもしれない。
 隣のサスケは、とても難しい顔をして。
「……それは……無ぇんじゃねぇか?」
「そーかなー」
 ちぇ、残念。
 金は使えないけど、楽しめるのが祭りってやつだ。お店の人も、冷やかし上等って感じだし。
 小腹が空いたから、何か買おうかと思う。
「サスケ、たこ焼食おうぜ」
 サスケも減っていたのか、すぐに賛成した。
 さて。
 たこ焼屋……って言っても、ざっと見えるくらいで5件くらいある。
 どれにしよーかなー。
 あ、あの店にするってば。
「じゃ、オレ買って……ぐぇ」
 駆け出すオレの襟首掴んで何故か阻止したサスケ。
「何すんだってば!」
「何で、あの店選んだ………」
 どうしてか、睨むみたいにオレを見る。
「え、だって店やってんのが綺麗なお姉さんだから」
 心情的には、おっさんやヤンキーよりはこっちだってばよ。
「……………」
 サスケは更にじと眼で睨む。本当、何だ?
「たこ焼は俺が買って来るから、お前は別なものでも買って来い。飲み物でもなんでも。
 たこ焼だけじゃ寂しいだろ」
「? ん〜、うん」
 サスケの言ってる事は別に可笑しくないけど……何か、確実に可笑しい。
 曖昧な言葉しか返してないオレをほっといて、サスケは勝手に買いに行った。勝手なヤツめ。
 とりあえず、オレは焼き鳥4本(タレと塩2本づつ。ナイスセレクト!)とジュースを1本買った。焼き鳥は1本50円。金銭的都合でジュースは半分こだ。
 程なくして、サスケがたこ焼パックを持って戻ってきた。
「サスケー、たこ焼頂戴、たこ焼!」
「早速それかよ」
 呆れ顔なサスケ。
「あ、オレ、焼き鳥買ったんだ。塩とタレ」
「へー、気が効いてるな」
「だってばv」
 胸を反りたいけど、小さいピラミッドを作ってる焼き鳥があるから出来ないけども。
 狭い空間で苦労して互いの持ち物交換して、オレはたこ焼にあり付けた。
 うーん、美味い!たこ焼考え付いたヤツって、天才だってばよ。
 そのまま歩き食いをしていると(歩き食いも、普段なら注意される事だってばね)、交差点に出た。
 白く大きな字で地面にある「トマレ」の上に立ってて、何だか可笑しな気分だ。
 さて、どっちに行こうかなー。
 と。
 ………げ。
「サ、サスケ!あっち行くってば!!」
「あぁ、何だ?」
「何だじゃねー、早く行かねぇと!」
「……あっちに何かあるのかよ」
 わーサスケバカー!!!!
 折角、逃げれたのに!
 サスケが振り向く。振り向いた後、少し止まった。
「……犬塚?」
 あー!バレたー!!
 恐る恐るそっちを見れば。
 キバが、とっても意味深な笑みを浮かべて(しかも口元に手をあてて)いた。
 で。
 キバは、そのまま通りに消えていった。
「あいつも来てたのか……」
「あー、バレた!思いっきりバレたってばよー!!!
 うぅ、キバのやつ、次の登校日に絶対言いふらすってばよ……
 あーもう、また女子から睨まれるってば……」
 どーゆー訳なんだか、オレはサスケファンの女の子にいまいち評判がよろしくない。
 曰く、サスケ君と仲がいいから、だそうだ。
 そりゃー確かにサスケとは何だかんだで、喧嘩も一杯するけど、遊ぶのも一杯するし。
 でも、他のヤツと同じ扱いじゃん?
 相手がサスケってだけで、この扱いは酷だってばよ。
「…………おい」
「んあ?」
 凄く低い声で、サスケが呼んだ。……怒ってる?でも何で?
「お前、そんな目に遭ってたのか……」
「そんな目?」
「今言っただろ、睨まれてる、って」
「あー、それ?」
 サスケは、ますます睨んで。……今日は、よく睨むな。
「何で、言ねぇんだ?」
「へ? いやだって、そんなに実際に何かされた訳でもないし……されたら、ちゃんとカカシ先生に言うって約束してるってば」
「カカシのヤローには言ったのか!?」
 ガ!と肩を掴むサスケ。
「言ったっていうか……先生が勝手に気づいた」
 て言うかサスケ、お前担任に呼び捨てはねぇんじゃねーの?
 そりゃ確かにカカシ先生は、朝のショートタイムに大抵は出ないし、没収した漫画本を自分が一番堪能してるし、発禁図書を教室で平気に広げてるけど、うーん、もう呼び捨てでもいいのか?
 でも、先生としてはとてもいい先生だってばよ。
 ちょっとキツい事言われて、さすがにへこんだ日に、とーとつに資料室に居たカカシ先生に引っ張り込まれて、「整理、手伝ってねv」と、何の約束もしてないのにいきなり切り出して(あ、サスケと似てる?)。
 何とか終わって、当直室でカップラーメン食べたんだ。
 「うっめー!」と叫んだオレに、カカシ先生は、「元気になって、良かったよ」って言ったんだ。
 あれは、スッゲー嬉しかったなぁ。
 てな事を説くと語って、とりあえず呼び捨てはやめとけ、って言っておいた。ラーメンの恩もあるしな。
「……何時の話だ、それは……」
「んー、と1ヶ月くらい前かな?お前、そのしかめっ面止めとけよ」
「誰に。何て言われたんだ」
「えー? ンなのもう忘れたってば」
 変なサスケ。何でそんな事聞くんだ?
「……………」
 サスケは相変わらず怖い顔だった。怖い、つーか、困りすぎてるっていうか。
「……今度は……」
「ん?」
「今度から、何か言われたら、俺に言え」
「え、何で」
「………いいから!」
 そう言った時のサスケの顔が何だか必死で。
 オレは。
 ちょっと、笑った。




 花火の最後、スターマインが夜空に散った。
 それと一緒に、祭りも終わる。いくらなんでも、もう帰らないとな。
 帰り道も、行きと同じように混んでたけど、やっぱり何か違う。
 駅に着いて、自転車に跨って夜道を走る。
 オレの家に到着。サスケも此処までついて来た。同じ方向だっけか?
「じゃ、サスケ、おやすみー」
「あぁ………」
 ひらひら手を振るオレに、サスケも振り返す。うぉ、何だか素直だってばよ。
「……ナルト」
 家に入る直前、サスケが呼んだ。
「何だってば?」
「……俺と居るせいで、女子に何か言われるってのに、それでも、俺と居るんだな、お前は」
 え。
 ……うーん、そう言えば、何となく授業とか放課で、サスケとよくつるんでるような気が……いや、確実につるんでる。
 だって、ほら、最初の席順でも前後だったし。うずまきにうちは。
 でも。
 それが無くても、やっぱりサスケと、こうして今日、祭りに出かけてるような気が、する。何となくだけど。
「だって、オレ、お前の事そんなに嫌いじゃないってばよ?」
 サスケと居ると女子が煩いのは事実だけどさ、サスケが言ってる訳じゃねーもん。サクラちゃんに言われるのがちょっと痛いけども。
 そう、オレが言うと。
「そうか」
 と、やっとサスケも笑った。




 夏休み。
 夏休みには宿題をつけないとなりません。
 これのせいで、8月31日に沢山の学生が泣きを見る羽目になるんだってばね……
 でも、今日のオレは大丈夫!!書く事盛りだくさん!!
 なんて意気込んだせいか、日記つけただけで眠くなった。
 とりあえず、今日は寝よう。沢山歩いて疲れたってばよ。
 あ、登校日って、8月最初の月曜だっけ……
 うーん、サスケと祭りに行ったって、キバが言いふらすんだろーなぁー……
 噂じゃ、サスケ、女子に祭りとか誘われてたのを、断りまくったんだっけ。
 恨まれるなぁー…………
 ………………




 ま、いっか




<終わり>





サスナル祭りでデート☆(サスケ視点のみ)
どうしてかカカシ先生出張った。ナルトの回想だけどね。


本当は、キバの他にもシノとかシカマルとかも出る予定で、ナルトがサスケとはぐれて彷徨ってる所に皆と遭遇。
上の作品と同じ理由でキバにまずい!と警戒するナルト。1人で探すってばとか言うのに、キバ、こんなところで親切心炸裂。一緒に探してやるゼーと言ってる所にサスケ参上。固まるナルト。ここからは若い人に任せてで率先して消え失せるキバ君。
てな感じだったんだけどね。
結局、殆ど2人きりの感じに。キバ君、遠目に居たのを目視されただけだし。

やっぱ祭りだし、ちょっと封鎖的な雰囲気が出したかったのよ。
祭りと街中の境って、もの凄くはっきりしてるから不思議。

サスケは……報われたのかなー。
どうか押入れに引きこもらないようにナ☆