とんでもない所に触れられる。親にも見せた事のない所や、自分ですら知らない場所まで。
「あ、あっ……ひょ、雹……っ!やだぁっ……」
ひく、と喉を震わせて出る声が、嗚咽なのか嬌声なのかは自分では解らない。ただ、いずれにせよ、そんな物を出してしまい、聴かれているのだというのは、今まで感じた事の無い羞恥を呼び起こした。いっそ、気が狂って何もかも解らなくなってしまいたい、と思ってしまう。
「あぅっ!はぁ………あぁぁぁっ!」
きちゅ、と撫でていただけの指が、熟れた襞を分け入るように侵入していく。
「やだ!それ、やだ!」
首を降って抵抗するが、指は引き抜かれる様子は一向に見せない。それ所か、内部で動き、中を確かめるように。
指が動くたび、くちゅくちょと濡れた音がするのに、爆はもう泣き出してしまいたい。
そんな爆に、雹の呑気な声が降りかかる。
「んー、大分入るようになってきたねv」
何でか知らないが、とても嬉しそうだ。
こんなに機嫌がいいなら、言う事をきいてもらえるかもしれない。仄かな希望を持って、爆はまた言う。
「……ひょぉ、ねが……もう、止め、」
爆にとっては不幸な事だが、そうやって涙を讃えて懇願するのは、雹にとっては十分誘惑されているに等しい。
「……爆くん、胸、おっきくしたいんだよね?」
「?」
何をいきなり言い出すのか。きょとんとする。
「気持ちいい時に胸揉むと、効果抜群らしいよ?」
「やっ!」
そう言うと、下から持ち上げるように胸を掴む。愛撫程度の痛みを与えるくらいに。
「ひょ、……んんン!」
そして突起を口に食む。舌先で軽く転がすようにすれば、爆は堪らないといった具合に唇を噛み締め、顔を出来る限り背ける。
「ふぅ、う、う……!」
「あぁ、でも片方だけじゃバランス悪くなっちゃうよね」
つぅ、と銀糸を残して雹が顔を上げる。
雹の片手は、爆の中に留まっている。一旦それを引き抜くと、爆が耐えるように震える。
雹は爆の両手を取る。片方が濡れているのに、爆は顔を赤くした。
「だからさ、自分で揉んでて」
「え……あ、ふぁっん!」
ふにゅ、と小さい自分の乳房が自分の手に当たる。
「な、何!?あぁっ!」
「こうやって、揉むんだよ。ここもしてあげるといいかもね」
「きゃぅ……!」
胸の先端を触らせると、仔犬の鳴いたような声が出た。雹にされているとは言え、自分の手なのに。
「雹、あ、あ!」
両足が開かれ、その間に雹が潜るのが解った。
来る、と思った途端、それが来た。敏感な部分を、舌で愛撫されるダイレクトな快楽。
「ひぁ!あぁぁっん!」
いい声、と幼い嬌声をうっとりとした心地で聴く。
「ちゃんと胸やってる?でないと止めちゃうから」
爆はびく、とする。一回、本当に途中で止められた記憶が蘇る。自分で快楽を消化出来る術を知らない爆にとって、あれは拷問と同じだった。まぁ、その後ちゃんとしてくれたのだが。
雹からの愛撫でままならない身体で、どうにか胸に手を当てる。
「くふ、ん……!」
自分の手なのに、触った途端、ぞく、と背筋を何かが駆け上がった。雹にされたみたいに。それともやっぱり雹が触ってるんだろうか。もう、何も解らない。
「……あっ、あっあ、あ!」
単発的な声が上がる。絶頂が近くて、頭の芯がじんじんする。
最後、とても大きな声を出したのかもしれない。でも、爆には大きな快感の波が身体を襲ったくらいしか解らない。
「……は、ぁ……ん………」
脱力しきって、そのまま意識が沈む。瞼を開けておくのも、今は億劫だ。
よく出来ました、と雹が両頬を優しく挟み、額にキスをする。だから、胸に被さっている手は、自分のなんだ、と爆はぼんやり思っていた。
急速に落ちていった意識が、ゆっくりゆっくり浮上する。
まず、ベットに寝ているのだと解る。そして、自分がタオル地で出来たガウンを着ている事。マクラにしているのが雹の腕だという事を。
雹の腕をマクラにしていた、というより、雹に寄りかかるように寝ていたらしい……いや、眠らされていた、というのが正解だろう。
「…………」
ゆっくり、目を開ける。雹の顔がすぐそこにあった。
「あ、起きた?まだ、寝る?」
2つ目の質問に、首を横に振って答える。
そう、と雹は返事し、髪にキスをした。
「じゃぁ、もうちょっと待ってから、朝食の準備するね」
上の爆の答えが、虚勢だったのを考え、また眠れるようにと思いやった雹のセリフだ。
時刻は昼を少し過ぎた頃で、ブランチが出された。飲み物、サラダ、サンドウィッチに小さいケーキ。起き抜けにちょうどいい温度にされたカフェ・オ・レが心地よい。
「おかわりが欲しかったら、言ってね」
とは言え、今まで爆がそれを申し出た事は無い。それは、いつも爆にとって足るないでもなく、多いでもない分量だからだ。
ふと、自分の格好を見てみる。
ガウンを着せられた身体は、さんざん汗をかいたのに、そんな不愉快さはない。顔も、沢山泣いた筈なのだが、つっぱったりはしてない。つまり、きちんと洗ってくれている、という事である。
「…………」
「……どうしたの?」
食べる手の止まった爆を、気遣わしげに見る雹。出した量はいつも通りだ。それが食べきれないとなれば、何か異変があったに違いない。
「……どうして、貴様はそうなんだ?」
「そう……って、どう?」
「だから、いつもは優しいのに……その、」
その次が言えないのか、顔を真っ赤にして俯く。
雹は頬をぽりぽりと掻く。何となく、爆の言いたい事が解ってしまった。
「えっちする時は意地悪……とか?」
「っ、」
息を詰らせる爆。それなのだと、雹は解った。
「怖い?」
爆はさんざん考え、けれど確かに頷いた。
雹は、いよいよ気まずく頭を掻く。
「……ごめん」
「……?」
雹がいきなり謝ったので、伏せていた顔を上げた。しかし、今度は雹が頭を下げていた。
「本当はさ、もっと優しくしたいって思ってるんだけどね。紳士的にさ。君がこんなに好きだよって言葉以外で伝えてるんだよ、みたいな」
「え………」
「でも、しているとどんどんボルテージ上がっちゃうっていうか、エスカレートしちゃって、もっともっと鳴かせたくなっちゃって……まぁ、早い話、自分で何しているか解らなくなっちゃうんだよね」
あははーと自棄になったみたいに笑う。爆は今聞いた雹のセリフを、反芻していた。
(何をしているか解らなくなるって……オレだけじゃ、無かったんだ)
そう解ったら、いままで痞えていた何かが、ふ、と消えたような気がした。
雹はまだ続いている。
「我に返って君を見ると、もう気絶同然に寝ているでしょ?これじゃいけない、って、本当解ってるんだけど……抑えが効かないんだ。好きすぎちゃって。いっぱいしたい」
飾らない雹の告白のような言葉を聞いて、爆は赤くなる。
「だからさ、もうやりたくないって言うなら、んー、朝か昼にそう言って、夜は出来れば部屋に……あ、いや、僕が部屋に篭るよ、うん」
「……別に、いい」
ぽつんと零された爆の言葉に、え、と聞き返す雹。
「オレが好きでしたいなら……別に、いい。オレも、ちゃんと受け止められるように、頑張るから」
無理に我慢しないで、と言う。
雹は苦笑する。
「……解ってる?もう、今の言葉で、君を押し倒してめちゃくちゃにしちゃいたいんだよ。僕は」
脅すように言ってみる。が、
「っ、……構わない」
一瞬震えたが、ひた、と真摯な眼でそう言う。雹の好きな眼だ。
解っていた事だ。爆には、敵わない。
顎を指でそっと上にあげる。そのまま押し倒されるのか、と思ったが、軽くキスしただけで終わった。
「僕が君に優しくするのは、させてくれるように仕向けているんだと思った?」
「……そ、そんな、」
慌てるような爆に、クスっと笑う。綺麗な笑みだったので、爆は頬を染めて見入った。
「ごめんね。今まで怖い思いさせちゃって」
頬を優しく撫でる。くすぐったくて、優しい。
(……怖い、か)
自分でさっきも頷いていたが、確かに、自分は雹が怖かった。少しは。
同じ雹なのに、全然違う。優しい時に、意地悪な時。両方とも、やっぱり同一人物だから、同じ性質は孕んでいるものの、それ以外が全く違った。
例えば、北風とアイスクリームみたいなもので。
同じ、冷たいものなのに、決して同じではない。
いつ、そのスイッチが入れ替わるのか。特に、夜になると雹に対して敏感になった。
雹も、自分が警戒しているのを、もしかしたら気づいていたのかもしれない。だから、必要以上に拘束するみたいに、刻み込むように、執拗に愛撫していたのだろうか。
「雹。もう、恥かしい事とかはしないか?」
雹を見上げ、爆が言う。
しかし、雹は困ったように視線を泳がせ、
「そ……それは……」
「断言出来んのか」
「だって………」
雹は言いにくそうにしていたが、それでも言った。
「恥ずかしがっている時の爆くん……凄くえっちくて、可愛いんだもん………」
言われた直後、爆はきょとんとしていたが、段々言われた内容が解ってきたのか、怒りと羞恥に顔を染める。
「なっ……!ばっ………!じ、自分でさせといて事に何を言うか-------!!」
「だってだって〜」
爆に怒鳴られ、雹はおろおろするばかりで。
そうなると、さっきまで自分を抱いていた時のような雹の方がいっそいいのでは、すら思えてくる。
でも、そう思えるのは好かれていると自覚出来たからこそ。
……抱かれるのは、実はそんなに嫌じゃない。好きだよという雹の気持ちで、身体の中が一杯になっているような気がするから。
爆はふぅ、と溜息を吐くと。
「……あんまり変な事したら、怒るからな」
「だって〜………えっ?」
ぼそ、と吐かれた爆のセリフに、一瞬眼を丸くする。
そして、理解出来たら。
「ば…………爆く〜〜〜〜ん!」
「うわ!朝飯くらい食わせんか!」
「好き!世界で一番大好きだよ!」
子供みたいに陳腐なセリフ。
何だか微笑ましくて、つい絆されてしまった爆は、その日は家の中だけで過ごす羽目になり、当然雹はあとでたっぷり怒られた。
<END>
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