クリスマスには恋人と居なきゃ、ってのは、折角理由があるのに居ないのは勿体無いって事かな、と天馬は思う。
だって、自分はずっと帝月と居たい。
「……んっ」
浴室内は音がよく響いて、息の詰る音すら相手に聴こえていそうだ。
朝も早い時間から、あんな事をしてしまって、昼飯の前に風呂に入った……まではいいけど。
「ちょ、……っミッチー……」
「……ん?」
すっ呆けてるような、誤魔化しているような。
広い浴槽の中、2人の身体はとても密着している。
帝月が後ろから抱きかかえるような格好で、胸と腕で天馬を閉じ込めている。
それならまだいいけど、その手が。
「やっ、何処、触っ……ひゃぁっ!」
きゅぅ、と胸の突起を摘まれ、ぱしゃ、と湯を跳ね上げて身が竦んだ。
「ふぁ、ん……あンっ……」
もう片方の手も、反対の胸を摩っていたかと思えば、どんどん下腹部へと下がり。
くちゅ、と湯の中でも濡れている箇所へと潜り込む。
「ミッ、ミッチー!さっきしたばっか……!!」
「そうだな……すんなり、入る」
「んんっ……っ!」
ほら、と指が2本入る。
「はっ……あぁん……」
入れた指を、行為を真似るみたいに出し抜きさせれば、鼻の掛かった甘い声がする。
「んくっ……ミッ……チー……」
涙の溜まった潤んだ瞳が、自分を見る。
何故入ってこないのか、と訴えるみたいに。
「…………」
帝月はそれに困ったように笑う。そりゃぁ、挿れたいに決まっているが、付けてもない状態では、出来る筈も無い。
ただ快楽を求める行為ではない、と帝月は常に心に置いている。でないと、何処までも暴走しそうだから。
この身体をずっと、どこまでも貪りたいという、欲求に。
「……とりあえず、お前だけ」
煽られたままでは辛いだろうと、そう言っても。
「……や、だ……」
熱が溜まりに溜まって、震える身体になっても、天馬は言う。
「一緒が、いい……」
「…………」
あぁ、そうだった。
快楽、求めるだけでは、無いのだった。
「立てるか……?」
天馬はこっくり頷いた。
1人じゃとても立てないけど、帝月が支えてくれるから。
とろとろに蕩けた箇所に、熱くて固いものが当たった。そう、思ってすぐに、帝月が入って来た。
「んんンっ…………あ-------ッツ!!」
「……っ!」
先ほど受け入れていた其処は、容易く帝月を全部飲み込んだ。熱く絡みつく内壁に、帝月は辛うじて堪える。
「……そんなに、欲しかったのか?」
「ち、違……っ!あっ!あぁッ!んっ!」
からかう様にそう言えば、真っ赤になった天馬がそれを否定しようとする。
そのセリフを全部待たないで、帝月は律動し始めた。天馬も切羽詰っていたかもしれないが、それは自分だって同じだ。
しかも、天馬の中に入って、余裕は全部吹き飛んだ。
最初から、そんなものは少ししかないけど。
「ひ、ぁん……!っ……ふぁ、ミッチィ………」
自分へと手を伸ばす天馬。快楽に吹き飛ばされそうで、縋る物を探している。
手を伸ばしているのは、それを与えている当人だというのに。
「……天馬」
でも、それがとても愛おしい。
手にそっとキスをして、首に掛けさせる。途端、ぎゅっとしがみ付く仕草。
そして顔が少し綻んだのは、気のせいだろうか。
抱いているのは自分なのだと、解るように、深いキスをした。
いつもより、少し遅い昼飯。天馬は、とても無口だった。
が、食事に勤しんでいる訳でも無く、箸を持ったままである。
「天馬、味噌汁が冷めるぞ」
「う、うん………」
帝月に促されて、箸を動かす。
もぐもぐと食べている最中でも、ちょっと前の事が頭を占めている。
(もう、布団片付けたから、もうしねぇよな………しねぇ、よな)
でもあと1回くらいなら、だって休みだし……って違う違う!!
食器を片付ける時にそんな事をしていたので、危うく皿を落としそうになる。
「わわわっ」
「……危ないな」
崩れかけた食器を、すかさず支える。
「あ、あんがと……」
間近になった顔に、沸騰しそうに真っ赤になる。
「うー………」
「……何を1人で百面相をしているんだ」
「だ……って!2回も、その、しちゃって、しかも午前中……」
「……天馬」
唐突に名前を呼ばれ、ふぇっ?と飛び上がったような返事をする。
「冬休み中、何か、誰かと旅行とか無いか?」
「え?んなもん無いけど?」
そうか、と帝月は頷いた。
「……お前さえ、よければ、なんだが」
「?」
「休み中、僕の家に来ないか?」
「え。………えッ!!」
ようやく内容が飲み込めたのか、天馬は吃驚する。
「だから、まぁ、お前次第で……」
「いいの!ミッチー!本当に!?」
帝月のセリフを遮って、天馬が叫ぶように言う。
「マジで?迷惑じゃねぇの!?」
「此処には僕しかいないし……
僕は、お前と一緒に居たいからな」
だめか?と訊くより前に、天馬に抱き締められる。
「……ミッチー、すげークリスマスプレゼントだな!」
「…………」
「じゃ、着替えとか持って来るから!」
あと、隣の世話をやいてくれるオバちゃんにも言わなきゃ、と小さい台風みたいに慌しく天馬は身支度を整える。
「…………」
取り残されたように、ぽつんと立ち尽くす帝月は、ややあって、ふ、と柔らかく微笑を浮かべた。
どちらかと言えば、プレゼントを貰う方になるのは自分なのではないだろうか、と思って。
<END>
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