冬休みは夏休みと比べて、かなり短い。
しかし、その短い間に大きなイベントが2つある。その内の1つは言うまでも無くクリスマスだ。
クリスマスと正月と、どっちがどっちと比べる訳でもないが、恋人達の雰囲気を盛り上げるなら、それはクリスマスだろう。
クリスマス・イブ。この日、天馬は帝月とデートする予定だ。12月に入った時から。
そして、それは明日の事。
「えへへー♪」
明日着ていく服をハンガーに掛け、それを着て帝月と並ぶ自分を想像して微笑む。
デートっぽさを出す為、いつもは休みの日なら帝月の家に泊まるのだが、当日待ち合わせになった。
その後は、まぁ、泊まるだろうけども。
それを思ってぽっと赤くなる。次いで、1人なのに誤魔化そうとごしごしと頬を擦った。
「ミッチーと、デートかぁ……」
そう呟いて、またほにゃん、と顔が崩れるのだった。
で、当日。
帝月はやっぱり先に来ていた。
「ミッチー!」
「来たか」
黒いコートに身を包んだ帝月は、立っているだけで様になる。
「な、今日名一杯おめかししてみたんだ!似合う?」
ほら、と両手を肩まで上げ、服を披露する。
人に聞けば、もっといいコーディネイトをしてもらえたのかもしれないが、天馬はどうしても自分で選びたかった。
「あぁ、似合うな」
「へへ……」
そう言って貰えた時、とても嬉しいから。
「じゃ、行こうぜ」
そう言って、手を繋ぐ。
「…………」
「……?天馬?」
しかし、数歩歩いただけで、天馬がふいに止まった。
「……ミッチー?」
結構真剣な表情で、顔を覗きこむ。少し、帝月が仰け反った。
びた、と額に天馬の温かい手が触れる。
そして、怒ったように言う。
「ミッチー!風邪引いてんじゃん!!!」
「…………」
そうして、あっという間に帝月は自宅へと強制送還された。無論、天馬もだが。
「布団敷くから。寝巻きに着替えて」
「これくらい、大した事じゃ……」
帝月がいい訳し始めると、天馬がまた詰め寄る。
「引き始めか終わりかはしんねーけど!そうやって油断してるとずるずる長引くだけなんだからな!軽いならそれ幸いに、さっさと治さねーと!!」
天馬の迫力に、帝月も素直に解った、というしか無い。
だが、身体がだるかったのも事実だ。動くのが少し億劫で、天馬と出かけるのでなければ、絶対に外へだなんて行かないだろう。
それでも、本当に些細な体調不良なのだが。
そんな事に気づいたくらい、自分を見てくれているのだろうか、と思うと少し感激してしまう。
「な、ご飯、お粥とおじやと雑炊と、どれがいい?」
ちゃんと布団に潜った帝月に、そう訊く。
「……そこまで病人じゃない」
憮然として呟くように答える。
「ふーん、じゃ、食べたい物なんでも言ってくれよ。あ、果物でも剥こ……」
セリフ半ばに、天馬は起き上がった帝月に抱き締められた。
「……何もしなくてもいいから、側に居ろ。今日の予定が無くなって、僕は少し機嫌が悪いんだ……」
「………」
「……折角、色々と考えたのに……」
はー、と自分の失態を恥じるように、帝月が溜息を吐いた。
「……んー、でもさ、クリスマスは来年も来るじゃん」
とてもきつく抱き締めたため、天馬の言葉が振動となって身体にも伝わる。
「それより、ミッチーが具合悪そうにしてんのがヤだよ」
ふと身体を離して覗き込んだ天馬の眼が、少し潤んでいたので帝月は思わず噴出す。
ただの風邪だ、とそう言って額や頬に何度もキスを繰り返した。
その日の晩は、当然に天馬も泊まり、別の布団で寝た。
そう言えば、帝月の家で別々の布団で寝るなんて、何度も来てこれが始めてだな、と思って、また赤くなった。
次の日の朝。いつもの習慣通りに目覚めた天馬。
ふあ〜っと大きな欠伸をした後、隣に居るだろう帝月を見たのだが。
居ない。
「……ミッチー!!」
「……何処かへ行くかと思ったか?」
叫んだ側から、声が掛かった。
「あ!何処行ってたんだよ!」
「朝食の用意だ。もう出来てるぞ」
ご飯だー、と現金に天馬は居間へ向かう。それにちょっとやれやれと思ったが、やっぱり天馬はこうがいい、とも思ったのだった。
「今日はどうする?出かけるか?」
「んー……」
もぐもぐと卵焼きを食べながら。
「やっぱいいや。今日も家で過ごそうぜ」
「いいのか?それで」
「だってさ、本音言うと、ミッチーと2人きりの方が好きなんだ」
そりゃ、出かけるのだって、楽しいけど、と照れを誤魔化す為か、茶碗のご飯を掻っ込んだ。
その時の帝月の反応にも気づかないで。
寝巻きは家のを借りた。私服に着替える為に、帯をしゅ、と解いた時だった。
「ほや?」
ぎゅ、と後ろから帝月に抱き締められた。
「何?ミッ………」
ふと振り返った帝月が、とても綺麗な微笑を浮かべていたので、着替え途中というのも忘れ、見入ってしまった。
「っ、ん」
そして、抵抗する事も無く、口付けされた。それはとても挨拶のようなものではなくて。
「ふぁ……ん、ん」
舌と舌が深く、ちゅくちゅくと濡れた音がする。情事の最中みたいに。
「ん……っ」
「横にするぞ」
「え?……」
確かに、まだ布団は片付けてなくて、そのままだから横になってもいいけれど。
しかし、今の現状を踏まえて横になる、という事は。
つまり。
「………。えっ!ちょ、ミッチー!!?」
「今日は、外へ出ないんだろう?」
「そ、そーだけど!だけどまだ朝なのに!!」
「関係無い」
天馬の意見をあっさり覆した帝月。
こんなに明るい内にするなんて。まぁ、初めてじゃないんだけども。
けど、あの時こんな恥ずかしいのはもうご免だ、と思ったのに。
「ミッチー!……っ、あぅ……!」
れる、と首筋を舐められるのと同時に、胸を触られる。複数を同時に愛撫されるのに弱い天馬は、ひとたまりも無い。膝ががくがくして、とても立ってられない。
「や、ぁ………あっ!」
下着越しに、すでに濡れていた箇所を撫でられ、声が撥ねる。
「や、やだ……って……あん……!」
「もっとしっかり掴まれ」
「ふ………」
ぎゅ、としがみ付いたのを感じ、ゆっくりと押し倒す。背中に布団の感触を感じた時、力が抜けたのか腕も落ちる。
「ミッチー……!」
下着を脱がした時、つ、と糸を引いたのが解ったのか、真っ赤になって震える。
「……ホントにすんだ……」
「あぁ」
ここまで来て、今更引き返せないけど。
「……それもすんの?」
帝月は、天馬の脚の間に顔を埋めようとしている。
「そうしないと、お前がきついだろう」
「……ぅー」
「観念しろ」
その気にさせたお前が悪い、と勝手な事を言う。
ミッチーのバカヤロ、と悪態をつき、来るだろう快楽に胸が大きくドキドキとした。
「、ん………」
ちゅ、と悪戯に内腿を吸われる。
「ふ、ぁ……あっ、あーっ……!!」
ぬるりとしたものが、襞を掻き分けて内側まで潜り込んでくる。その感触に、堪らず声が漏れる。
「あん!あっ!だ、めっ!やっぱこれ、だめだよぅ……!ミッチー……!!」
「………」
舌で慣らした箇所へ、指を埋め込ます。それとの結合部を、解れるように丹念に舌でなぞると、天馬の脚がひくひくと引き攣った。
「やだぁ……!もぅ……」
羞恥と、それの為か中々達せ無い苦しさに天馬がすすり泣くのが聴こえる。
「…………」
帝月は少し顔を離すと、上へとずらす。
快楽にぷっくりと膨らんでいた粒を、数回舌で優しく撫でてからちゅう、ときつく吸い上げた。
「ひぁッ!あ-----------……ッツ!!」
余韻を空間に残すような、大きな嬌声が上がる。
達した、というのは指に絡みつく内壁からでも、十分に解る。貪欲に自分の指を離すまいとしているような動きに、知らず喉が鳴った。
「ふぁ……ん………」
もう少し慣らす為に、指を前後に動かして、様子を窺う。2本埋め込んだ指は、何の苦も無く動く。もう、頃合だろう。自分的にも。
「あ……っん……」
指を引き抜く時、ぴくん、と天馬が反応する。
「……挿れるから」
「ん………」
条件反射みたいに、その時は薄く眼を開いて帝月を見て、足を開く。受け入れ易いように。それがとても愛おしいと思う。
キスをしてから、ゆっくりと自身を埋め込む。
「……っ、」
「ん、ん……!んー…!」
鼻に掛かった、くぐもった声でその感触に堪える。気持ち悪くも痛くもないけど、少しの異物感は否めないから。それもすぐ吹き飛んで、快楽に変ってしまうけど。
「はぅ……んん……」
「天、馬………」
はぁ、と熱っぽい声が帝月からも上がる。
「もう少し、足を開いて……奥まで、入らない……」
「………っ」
かぁ、っと赤くなりながらも、素直に足を開く。
すると、一気にぐ、と帝月が入ってくる。
「きゃ……!ん……」
びく!と天馬が戦き、声も撥ねる。
「………痛かった、か?」
「違う……びっくりした、だけ……」
ふるふると首を振る。
はぁ、とゆっくり呼吸して、落ち着かせる。
恥ずかしくて、とても恥ずかしいけど、帝月が中に入っていると思うと、とても安心して、落ち着く。
ずっと家に居たい、と言ったのは、こうなるのを少しは期待しての事だったと帝月に言ってみれば、どんな反応が見えるだろうか。
それでも、こんな朝っぱらからとは思ってはいなかったが。
<END>
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