月明かりのせいで夜だとしても
室内の光景ははっきりと見て取れた
すすり泣くような声
粘着質な水音
そして
床に広がる細やかな金糸
横たわる肢体は自らの愛撫で撥ねる
「ふぁ……あ、……ぁ……」
固く目を綴じているのは
自分の痴態を認めたく無いのと
傍らに居る帝月を視界に入れない為だ
「気持ちいいか?」

問いかけるような声に、ヒク、と身体を震わせ 首を振った その度にパサパサと髪が打ち付けられる音がする
「それは可笑しいな。 僕の知識だと、ヒトはこのような行為で快楽を得るという事だが?」
「やぁ……ミッチ、……見ないで……」
くい、と顎に掛けられた指で、すぐ近くまで来ているのを知る
「こういう時は、そんな間抜けな名称で呼ぶものじゃないぞ、天馬」
「やめ……帝、月」
顔を背けたかった けれど、この手が許してくれなくて
綴じられた目から、ぽろぽろと涙が零れた
それを愉しそうに、目を細める
「天馬。目を、開けろ」
命じられて、ふるりと身体が戦く 言われたら、逆らえない 恐る恐る目を開けると、本当にすぐ目の前に帝月が居た
「ぁ…………」
かぁ、と一気に温度が上がった 見られてるんだ 自分で自分のを弄っている所も それに感じている所も 死にたくなりそうな羞恥を覚えても、それでも手を離せない所も
「どうした。手が止まってるぞ」 「や、ぁ、ダメッ!」
きゅ、と白濁に塗れた手の上に、繊細な指が絡む
されているのはこっちなのに、物凄い罪悪感が襲った
「ダメ!ミッチー、離し……!」
「帝月、だ」
訂正し、唇を重ねる。 少し何かを言ってるらしいくぐもった声がした
逃れるように奥にあった熱い舌を捕まえ 自分の感触を覚えさせるように執拗に絡めた
唇の角度を変えても、互いの口腔を行き来する舌はそのままだった
長い口付けを終えると、銀糸が二人の間を繋げた
「ふぁ……ん、あ、あ……」
深い口付けで箍が外れたのか 今までと違い、恍惚とした表情を惜しみなく見せた
「……気持ちいいか」
先ほどと同じ質問をしてみる
「ぅん、イイ………」
とろんとした双眸が自分を写す
さて、どちらがどちらに堕ちるのが早いだろうか
「後ろもしてやれ」 「ん………」
素直に従う 液に塗れた指は、とてもすんなりと内部に侵入する
くちゅくちゅと前も後ろも厭らしい音がする
下半身が蕩ける
「………な、帝月……」
こういう緩い快楽が続くより、もっと強い快感が欲しくなった
「……帝、月………」
自分が使えるもの全てを使い、帝月を誘う
が、上から重ねていた手も、離れてしまった 泣きそうに、顔が歪む
「……自分で達してからだ」
残酷に、綺麗に笑い、額にキスを落とす それだけで、反応を示す もうどこもかしこも性感帯になってしまったみたいだ
再び羞恥が湧き出てきたが、止めるなんて出来るわけもなかった
「は……ん、あぁッ、あっ、ふあぁッ!」 「……淫らだな」 「っひぅ!」
耳の奥まで舌で嬲られ、短い嬌声が上がる
もっと、鳴いて欲しい 自分の為だけに
「や、ぁ、帝ッ、んん--------ッ!」
首筋や鎖骨辺りに幾つも痕を残している内に、熱が放たれた もう、何度か解らない
健康的に焼けた肌に、白い筋が幾つも通っているのは酷く扇情的だった
|
「おーい、ミッチー?目ぇ覚めたか?」 「……………」 何の屈託も無い笑顔が自分を覗き込む。 普段は癒しとなるそれも、今は。 「…………少し、出てくる……ッ!」 天馬の顔がとても見られない帝月は、後半の方は早口になり、そうそうと部屋から出て行ってしまった。 「……さっきまで寝ていたクセに、変なヤツ」 帝月の奇行に、天馬は首を傾げるしかなかった
(そういや、ミッチー、何だか幸せそうな顔して寝てたなー。 どんな夢見たか、帰ったら聞こう、っと)
|
夢オチです。痛ーとか言うな!
まさかキスも済ませないでいきなり直行させる訳にゃいかんだろ!!
ミッチー……青春だね☆
(ところでミッチーって、”出来る”の?)