sweetly boy,



 ここの学校の保健医は乱暴な事で有名だ。何せ「入る前より出た時の方が怪我が多い」などという評判がたつ程で。
 そんな保健医が主である保健室に出入りできるのは恋人(笑)の爆くらいなものだ。

 しかし、何事にも例外があるもので。

「お、コレ美味いな」
「ん〜、そうか?」
「……………おい」
「まぁ爆は気にいらねーと思うけどな。甘さ控えめだし」
「激は甘いのはあまり好きじゃないからな」
「…………………………おい」
「いやぁ、俺甘いの好きだぜ?例えばおま……」
「おい!!」
 と、先ほどからかなり無視されまくって声を張り上げた所でよーやく振り返ってもらえた情けないこの男こそ、”こいつに診断されるより狂犬に噛まれた方がマシ”と言われる最凶悪保健医の斬、その人である。
「どーしたのセンセ、大声なんか出しちゃってvv」
「黙れその原因」
 野良犬すら一蹴する斬の眼光を、激はさらりとかわす。
 斬は激が嫌いだが、激も斬が嫌いだった。まぁ解ると思うが。
 その理由は勿論爆である。
「全く、放課毎に来ては菓子を食い散らかしおって。用がないならとっとと出て行け」
「ふ〜ん。じゃ、爆行こうぜ」
「待て―――――!!(必死)」
「んだよ、出てけっつたり待てっつたり。言う事ころころ変えるヤツぁ信用無くすぜ? 
 あー、斬センセはもとからないから全然構わないっけv」
 なんてちゃは☆と笑って言ってくれた激に、斬が”このヤロ麻酔無しで解剖してやる!!”と思ってしまったところで誰が責められようか(いや、結構酷いかも)。
 しかもご丁寧に出て行こうとした時に爆の腰に手を回しているときた!!
(く……!爆が喜んでくれるからと、以前は断っていた”ほんのご挨拶代わり”にくれる菓子を貰ったのが間違いか!?)
 あれは数ヶ月前。その日たまたま外から保健室の前を通りかかった激はそこにあったクッキーの缶を目撃どきゃん。こいつぁラッキーvと窓から参入し、クッキーを頬張っている時に激は戻ってきた爆とご対面。
 これが二人の出会いであり、激の恋の始まりであった(始まらんでよし――――!!←斬の咆哮)
 が、しかしこの時点ですでに爆は斬と関係が出来上がってしまっており、激の中で斬は”人生における嫌いなヤツベストテン”のベスト3から目出度くナンバーワンに昇進したワケで。
 こーして正面きって堂々と嫌がらせをしているのである。当然爆が居るのではあまり本性を曝け出せないとの打算の上で。
 恋する男は狡猾だね☆
「……もうすぐ授業が始まるだろうが。とっとと教室へ戻れ」
「それもそうだな」
 斬に答えたのは爆だった。事実、5分前だ。
「――いや」
 激より先に、今度は斬が爆を捕らえる事に成功した。
「お前はここに残れ」
「なん――………!!」
 理由を問おうとした爆の言葉が、喉に引っかかったみたいに途切れた。そして顔を伏せ、抗う事無くやけに立派な椅子に座っている斬の胸に引き寄せられる。
「……どうした?爆」
「ぁッ……何で……も……な……んんッ!」
 きゅう、と斬にしがみつく。
(ま……さか、このヤロー!)
 真相に気づき始めた激に、さっき本人が浮かべた笑顔そのものを貼り付けた斬が言う。
「爆はどうやら体調がおかしいようだからな。しばらくここで休ませる事にする」
(この……ッ!)
 激には斬が爆に何をしているのか、はっきり解った。が、ここでそれを指摘して一番大打撃なのは爆だ。
(チッ!ここは引くしかねぇか……!!)
 今日の所は最初激優勢だったが、斬が勝利した(しかしこの場合、それと同時に狡猾さも優れていることになるが)。
「……爆、激は出て行ったぞ。もう、声を出しても大丈夫だ」
 と、声を促すように、爆自身へ触れた手の動きを早める。
「やぁッ!……あッ!あ――――ッ!」
 ビクビクとしなやかな肢体が波打って、爆は斬の掌に白い熱を放ってしまった。
「……ぁ………」
 くたり、とずり落ちそうになる身体を、斬がしっかり抱きとめる。
「相変わらず、いい感度だ……」
「ふぁ……ッ!」
 髪をかき上げ、露にした耳を滑った舌が這う。その刺激で、ぼんやりしていた意識が戻った。
「貴……様ッ、よくも………!!」
「……怒ったか」
「当たり前だ!!」
 側に寄せられた瞬間、衣服の中に斬の手がするりと侵入してきて、止める間もなく……
「……馬鹿!」
 何だかもう何もかも悔しくて。とりあえず罵ってみた。
「……教室へ行く。まだ、間に合うからな」
 怒気を露にした爆は斬から離れた。が。
 また胸の中へ収められる。
「斬!いい加減に……ンッ!」
 後ろの斬に振り向いた瞬間、口唇が重なった。舌で唇をなぞり、戦慄かせた隙を狙って舌を入れる。
「ぅ……んッ!ふ……ッ!」
「……逆らわないで合わせろ。いつも言ってるだろう?」
「ンーッ!んん……!」
(そんな事……言われても……!)
 されてるだけでも精一杯なのに、この上自分からなんて出来るわけがない。
 それとも、いっそ斬の言う通り合わせたら楽なんだろうか。試しに口の力を抜き、絡まる舌も逆らわずにされるがままにしてみる。
 すると、楽になった事はなったが……
 何か……いつもより……
(ぅわ……や……どう、し……ッ!)
 ……キスだけで―――
「んッ!……は……ぁ……」
 まさにギリギリの所で口唇が離れた。思わず、ほっと胸を撫で下ろす。
 だって、あのままだったら……
「……イキそう……だったか?」
「なッ………ッ!!」
 バレてしまったのかと、襤褸を出しそうになる。
「そ……そんな事ない!」
「そうか?」
「そう………」
 と、頷いて今の状況にはっとなる。
 何時の間のかベットの上に寝転がって、衣服を殆ど脱がされてしまっていた。
「え……ぁ……ッ!」
「……気がついていなかった……という事は、かなり良かったんだな」
「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」
 状況証拠を叩き付けられ、爆は真っ赤になるしかなかった。
「ちょ……ちょっと待て、貴様、もしや……!」
「あぁ、ここまで来たら最後までするしかないだろう」
「い、嫌だ!」
 前もしたというのに、何でそんなに授業中にしなくてはいけないのか。爆には理解出来ない。
 爆は然程この行為を受け入れる事は吝かではない。しかし妙な背徳感を感じさせる、この状況は断固御免被る。
「なっ……何でそんなに、会う端からしなくちゃいけないんだ!しかももうすぐ授業が……!」
「――したいさ」
 斬が真剣な表情で言ったので、爆も喚く口を塞いだ。
「会う時だけじゃなくて、ずっと爆を抱いていたい。俺のものだと誇示していたい。
 でないと、あいつみたいにお前に近寄るヤツが増えるからな」
「……そんな……心配しなくても、オレはそんなにもてないぞ」
 実は密かに想いを寄せる者も居たのだが、斬がそういうヤツを片っ端から校舎裏で伸していたので、いつしかとうとう爆に言い寄ろうという命知らずなヤツはいなくなってしまったのであった。
 無論、この事は爆は知らない。
 しかし。
 激のように、爆の事を本気で好きなら暴力ぐらいで屈する事はない。今まで、たまたま運が良く、そんなヤツが出てこなかっただけで。
 もしかしたらその中で、爆の方も好きになる者が居るのかもしれない。
「……本当、だぞ?」
 何処か寂しそうな斬に、爆はそっと頬に手を当てた。
 そうすれば途端に嬉しそうに、その手にキスをする斬。
 子供だなーと爆は呆れつつ、元に戻った事に顔を綻ばせる。
「爆……好きだ」
「な、何だ急に!!」
 斬は確かにキスをする(必要以上に)こういう事もする(必要以上に)。
 けど、好きだとか何だとかはあまり言わない人なので、爆はうろたえた。
「好きだと思っているから、好きだと言ったんだ。何か可笑しいか?」
「可笑しく……ない……けど……」
 快楽とはまた違って、爆の頬が紅潮する。
「可愛いな、お前は」
 可愛い、なんて言われてむっとした爆だが、熱くなっていた身体に幾つもキスを落とされ、瞳が段々と潤んでいく。
「はッ……あ……」
 爆の白い肢体に幾つも花弁のような跡が残る。まだ水泳の季節には程遠いから、場所を選べば構わないだろう。
「ひぁッ!……斬……ッ!」
 柔らかそうな内腿に歯を立てられ、爆が戦く。その刺激もあるだろうが、これからされる事にも。
「ま……待てッ……あぁッ!」
 トロリとしたローションで濡れた斬の指は、摩擦を起こさず爆の内へと入っていく。
「今日はちゃんと奥まで慣らしてやるからな」
 以前ここでした時にはローションが無かったので、後々爆は結構辛い思いをしたそうだ。
「……く、ふ……ぅんッ……!」
 爆の表情で、痛みを感じてないのが解る。段々と弄るのを大胆にしていき十分に解した。
「あ……」
 内部を荒らしていた指が引き抜かれ、熱を孕んでじんじんと疼く箇所に斬を感じた。
「爆……」
「んっ……」
 顔中に降るキスを、爆はくすぐったそうに受け止めた。それにより、緊張が解れたのを見計らって、爆の中へ入っていく。
「んくッ……ンンッ――――あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
 全てを受け入れると、爆が堪らないとでも言うように身を仰け反らす。
 衝撃で震えている爆に優しくキスをして、華奢な太股を肩に乗せる。そうしてより深い場所まで自分を埋め込む。
「あッ……あぁっ……はぁ、んッ!……」
 ゆっくりと律動すれば、それに合わさるような爆の嬌声。
 触発されるように斬の動きも速くなる。
「ひあぁッ!やぁッ!あ……斬ッ!あぅッ!」
「ッ…………!」
「あ――――………ッ!」
 耐え切れず、爆は絶頂に達し、その締め付けで斬も爆の中へ熱を放った。

 例によって爆は、保健室に設備されている簡易のシャワー室で斬に洗われていた。
 腕の中で爆はいろいろ複雑だ。
(また学校でしてしまった……しかも思いっきり感じて……)
 いくら斬に押し切られたといっても、それでは気持ちよくになんかなる筈もない。
 と、いう事は自分もこんな事を望んでいたんだろうか、と自己嫌悪に陥っていた。
 そんな爆の頬を、斬がペチンと叩いた。
「…………?」
 全然痛くなかったとはいえ、何故そんな事をしたのか。後ろから抱いている斬を、爆は首を捻って見た。
「……俺と居る時ぐらい、俺の事だけ考えろ」
 その言葉を聞いた途端、爆は思わず噴出した。
「……どうした」
「……だって、貴様……拗ねた子供そのものの表情してて……」
 斬がそんな顔するなんて、と爆は笑う。
「……あまり笑うと、ここでまたスルぞ」
 爆が大笑いするものだから、少し腹の立ってきた斬はそんな事を言ってみた。すると慌てて口を塞ぐ爆。
 自分で招いた結果とはいえ、そんなに自分とするのが嫌なのかとちょっと傷ついたり。
「斬、今度の日曜暇だろ。何処か行こう」
「……また何か奢れ、って事か?」
「当たり前だろう」
 いけしゃあしゃあと爆は言う。
 斬はこれ見よがしに溜息をついて、
「……子供」
「何?」
 子供扱いされるのが何より嫌いな爆である。
「いい加減大人になれ。する度に何か奢ってはまるで援助交際みたいじゃないか」
「よりによって何をほざくか、貴様は!!」
 とんでもない物言いに、爆は憤慨する。
「事実そうだろう」
「違う!別にオレはそれ目当てに斬としている訳じゃない!!」
「じゃぁ何なんだ」
「え…………」
 と、問い返された爆の顔が見る見るうちに赤くなる。
「だ……だから、それは……だな……」
 もごもごと口の中で何事か言う。
 ……これってやっぱり。
(子供だけど……意味は正しく把握してるんだな……)
 その上で自分としたいと言う爆。斬は改めて惚れ直していたりする。
「この前は中華だったから……今度はイタリア料理でも食いに行くか?」
「んー、リゾットが食べたいな」
 早速いろいろと召し上がるメニューを頭の中に巡らす爆を、ぎゅっと抱き締めて、
「……で、俺のデザートは爆だな」
「斬………」
 爆は斬を見て言った。
「……そのセリフ、親父臭い……」
 その一言に、斬は激しく落ち込んだ。




えー、という訳で保健医斬再び。今回激が当て馬的に登場!激ファンにすみまそん!!
爆を巡っての斬と激の会話は楽しいですねー、考えてて。しかも爆は「何のことやら」って感じじゃなきゃいけないんですよ!!(何を熱弁振るうか)
この爆はなんちゅーか”背伸びしている子供”って感じですな。何となく。
ではこれをリクして下さった天神さんへ捧ぐ!!残りのリクもなるたけ早く仕上げます!!