danger condition
街からちょっと外れた教会はここ最近賑やかだ。
破壊音で(騒がしいとも言う)。
「いってぇな爆!俺が何したって言うんだよ!!」
「えぇい貴様は10秒前の自分の台詞すら覚えとらんのか!?」
「10秒前ってオメーに『エッチしよv』って言っただけじゃねーか」
「それだたわけが----------!!」
と、爆は再び起き上がった激を壁に叩き付けた。さすがに立て続けにやられるとダメージの回復も遅い。
「全く、朝っぱらから何を考えとるんだ!?」
「……爆とエッチな事するこぎゅむ」
床に倒れたままほざく激を踏んで黙らせる。そしてそのまま爆は部屋に篭ってしまった。
「おーいて」
それからしばらくしてあまり痛そうじゃなく言いながら激がのそっと起き上がる。
(しかし爆のヤツ大丈夫かね……)
別に激は自分の欲情を晴らしたいだけであんな事をいったのではない。勿論それもあるのだが。
----インキュバスは人の欲望を糧に存在する。だというのに爆はもう1週間もしていない。
今度は前のような消滅の危険はないものの、人間の状態で言うとかなり腹が空いているはずだ。
想い人が不快な状態でいるというのは激といえども大変遺憾である。
何より自分が欲求不満だ(やっぱりそれか)
(最近襲おうにもかなり警戒しってっからなー(当然)そう簡単にはさせちゃくんねーぞ。 一体どうすれば……!!)
激は腕を組み、流血した頭で必死に考えるのであった。
「だぁぁぁぁぁぁ!腹の立つ!!」
(あいつはオレを何だと思ってるんだ!?)
激しく思っただけだが、自然と口から出てしまっていた。苛立ち紛れに勢いをつけてベットに飛び込む。スプリングが抗議の音を立てた。
(二言めにはヤろうヤろうって……!!)
今すぐ葬り去りたいぐらいだが、それには魔力が足りない。
しかし、魔力を補充するには激としなければならないというジレンマに爆は頭を抱えた。
いや、そんな事をする以前に。
(力が入らん……)
くたぁ、とベットに沈む。さっき無理して激に攻撃したせいか疲労感が手足に沈殿しているようだ。
(うー……やはり誰かから魔力を貰わないと……)
出来ればというか絶対に激以外がいいのだが。しかし下手に外へ出るのは如何なものか。
(ここにいる激以外っていったら……)
一人しか、いない。
カイは神父見習いなだけだが、師匠の激の言いつけで何故か家事一般も担っている。明らかに理不尽だと思うのだが不平を言わずに黙々とこなすので彼の真面目さが伺えるというものである。
「カイ……」
昼食の買い物から帰ってきたカイは、机に荷物を置き声のした方に振り向いた。
「爆殿。どうかしましたか?」
最初は教会に悪魔が居るなんて!と嘆いたカイだが、もうすっかり爆が居る事に慣れてしまった。
滅多に誰かを呼ぶ、という事をしなかった爆に心配そうに駆け寄る。
「カイ」
呼びかけられ、視線を合わせれば……急に遠のく意識と視界。
足っている事も出来なくなり、その場にずるずると座り込む。
(何とか……上手くいったな)
焦点の合わない、虚ろなカイの双眸を確認する。カイのこうなった原因は爆が「魅了」の術をかけらからである。元々備わっている能力なので、大した魔力も必要としないのだ。
最も爆はこれを使うのは初めてだが。
「悪いな……最中の記憶は消去するから」
申し訳なさそうにそう言い、力のないカイを壁に凭れかせ、衣服を脱がしていく。
と。
「……おい……」
地の底から這出るような大変不気味な声がした。思わず方を強張らせ、振り向けば……
案の定激だった。
「激……」
激からはこれでもかというくらいオーラが発しているというのに、表情はいっそ無表情といってもいいものだった。それが余計怖い。
「ぬぁーにをやってんのかなー?」
ひくひくとこめかみを引きつらす激。
えーと……えーーーと……
爆は必死に考えた。この窮地を抜け出す言い訳を。
しかしカイの衣服を脱がす行為に何か別に正当な理由が付けられるだろうか。いや、ない(反語)。
「あー……これは……」
「……………」
激はしばし視力の悪い人みたいに爆を見ていたが、やおらひょい、と担ぐ。
そして部屋へ直行。爆をぽん、とベットに乗せて正面からにじり寄る。
「オメー……やるの嫌だと言っておきながら、何カイのヤツ襲ってんだよ……」
爆はあう、と押し黙る。
「そ……それは……!」
「やっぱり腹減ってたんだろ」
解ってるなら訊くな!(爆の心の叫び)
「だったらどうして!そういう時こそ俺の出番じゃねーか!それこそもー、あんな事からそんな事までやってあげるのに!!」
「それだから嫌なんだ-----------!!」
爆の拒む理由を激はこれっぽっちも解っちゃいなかった。
(…………ッ!)
力一杯怒鳴ったせいか、爆は眩暈に襲われた。すかさず激が受け止める。
「……離せ……」
いい加減軸が不安定になった体ながらも激を突っぱねた。
「爆……」
狭い腕の中、それでも限界まで目を逸らす爆。
「ひょっとして……オメー俺の事嫌い?」
「…………」
切なさを交えた声に呼応し、爆は激の首に手をかけ……思いっきり絞める。
「きぃぃさぁぁまぁぁはぁぁぁ!!出会い頭に自分を無理やり襲った相手にいい感情が持てると思っているのかぁぁぁぁぁぁ!?」
「ば……爆……首……はさすが……に……」
激はあと一息でオチそうだ。
「それにな!オレは貴様のせいで自分の居た所に戻れないんだぞ!?」
「え?そうなの?」
首を絞められたまま、激は面食らったような顔をする。
爆の棲んでいる「むこう」と「ここ」を隔てる壁は、丁度マジックミラーのようになっていて、「むこう」から「ここ」は見えるが「ここ」から「むこう」は全くと言って良いほど見る事が出来ない。なので「むこう」から「ここ」へ来る際には出てきた所に目印をつけるのが常識だ。
しかし、爆の場合それを付ける前に激に襲われたので、「道」が何処にあるのか見当もつかないのである。
このメカニズムは確かに人間にはまだ知らないようだが……
「……そうでなかったら、貴様はどうしてオレがここにいると思ってたんだ?」
「いやぁ、何だかんだ言って俺の事が好きだから離れたくないのかなーと思って」
と、激はテヘ☆とおちゃめに笑った。
楽天家もここまできたら周囲に被害を及ぼすのでどうにかしてもらいたい……と爆は切に思った。
「という訳でオレは貴様は嫌いだ。だから離せ」
「嫌だ。だって離したらまたカイ襲うだろ?」
「襲わんわ-------------!!」
爆は顔が真っ赤だ。少し落ち着いた今、先ほど自分の仕出かした事がとんでもない事だと自覚したからだ。
「さっきはオレはどうかしてただけだ!」
「その『どうか』がまた出るかもしれねーだろー?」
「う…………」
痛い所を疲れて押し黙る爆。
「術使ってまで襲うくらい理性無くしてんだから、大人しく俺の言う事聞けっつーの」
「何だと……ッッ!?」
腕を捕まれ、今度は激に引き寄せられる。そして抗議する隙も与えず口唇が重なった。爆が拒む前に、口腔に舌が入り込む。
「ん……ンンッ!ン-------!!」
爆は激の胸を叩いて、止めさせようとしたが----久しぶりに感じる快楽は、まるで砂が水を吸い込むように爆の身体に染みて行く。
「あ……ふぁ……ン……」
暫くすれば突っぱねた筈の手は縋る様に、口付けの合間に聴こえる吐息は煽るように甘さを含んでいた。
至近距離で見る爆の双眸も潤んでいる。
「は……ふ……」
「気持ちいいだろ?やっぱり」
激の言葉に少し正気を戻した爆は首を横に降る。そして睨まれたものの、潤んだままで。
「ふーん……でもこっちこんなになってるけど?」
すでに熱を帯び始めた爆に手を伸ばす。
「ひゃ、あぁッ!やめ……ッ!」
激の腕を掴んで引き剥がそうと試みる。が、激の手が動く度に力が抜けてそれどころではなかった。
艶を含んだ声に激が調子に乗る。
「表情は気持ちいいって言ってるけどな……顔、もっと見せて」
「やぁッ!あッ!ンンぅ……ッ!」
空いている方の手で爆の顎を掴み、上向かせる。
そうして、爆がその手を離そうとすると下に伸びている手が爆を昂ぶらせる。
「やだぁッ……はぁ、んッ!」
「こんな可愛い顔してんのに……勿体ねーじゃん」
零れ始めた涙を舌で掬いながらも手は休めない。爆の震えが大きく、断続的になってきた。
「あっ、あ……あぁッ!」
「我慢は身体に良くねーぞ」
ぱく、と耳を咥えて唾液で溶かすように舐る。増えた快楽に体の熱が暴れる。
「ば、か……ッ!やッ、あ-------ッ!」
くっ、と悪戯に先端に爪を立てられ、その刺激で達してしまった。すこし間が空いたせいか、開放直後のじんじんとした痺れが足の指の先までピン、と張り詰めている。
「……はっ……は……ぁ……」
弛緩しきった身体を激の胸に預ける。あやす様に背中を撫でていた手が下へと滑っていった。双丘を両手で抱え込むようにして、それから。
「あッ!?ひぁッ!」
爆ので濡れていた指は容易く内へと入っていく。怠惰感に身を任せて無防備だったためか、爆は普段以上に過敏に反応した。
「しばらくご無沙汰だったから、ちゃんと慣らさねーとなv」
「やぁ、あっ、ンン!」
ほんの数回掻き混ぜただけで、くちゅくちゅと粘着質な音が響く。羞恥で居た堪れなくなった爆は後ろを弄る指から逃れようと腰を浮かせたのだが、激としては自分に抱きついて来たものだと錯覚してしまう。
それに、体制としてはこうなった方がやりやすかった。
「く、ぁ……んッ!あぁぁぁッ!!」
ぐぷ、と指の付け根まで入れられ、増えた指にさらに圧迫感が増える。
左右入れられた指をばらばらに、ぎりぎりまで引き抜いては全部なかまで入れる。
「ぅんッ!ん!は、ぁ……!げ、き……!」
感じ過ぎて指だけでは物足りない。そういう意味を込め、激を見上げたが、相手は意地悪く笑っているだけだった。
(こ……いつ……もしかして……)
自分がはっきり言葉にしないとやらないつもりだろうか。というか今までに何度もやられたらか間違いないだろう。
そう簡単に貴様の思い通りにはならない、と爆は口を噤んで顔を逸らす。
(意地張っちゃって……かーいいなぁ♪)
頭に口唇を落としてから、内部の指を端へ詰めて、もう一本潜り込ませる。
「あ……ッ!」
「今何本入ってるか解る?」
「うるさ……はぁんッ!」
内を押し広げる指が、熱く熟れた内壁を擦って……声を抑える事なんて出来ない。
「あっ……く、ふ!あぁ!あんン!はぁっ、あ-----!」
(ぁ……ダ、メ……!)
----イキそう-----!
そのまま絶頂に身を委ね様とした爆だが、何故か指が引き抜かれる。
そして横にさせられる。
「……?激……?」
こいつの性格からして、途中で終わるなんて事はありえない。
当の激は、何だか困ったような拗ねたような表情をしている。
そして、爆の顔中にキスを降らしながら。
「あーあ、これじゃどっちが苛めてるか解んねーよ」
激はちょっとヤケクソ気味に言う。
「?」
「オメーいい表情し過ぎだ……」
その言葉でよーやく事態が飲み込めた。
よーするにだ。激は爆を焦らして苛めていたのだが、爆の感じる顔を見て我慢が出来なくなった……と。
「……アホ……」
熱の燻る身体で悪態をつく。
「はいはい、どーせ俺はアホですよー。……けどな」
爆に覆いかぶさり、上から覗き込む。
「爆にだけだからな」
「……………」
何だ、真剣な表情も出来るじゃないか……ふわふわする意識の中、そんな事を爆は思った。
が、解れた箇所に激の熱を感じ、そんな事は頭から飛んだ。
「あっ……激……」
自分でもどういうつもりで呼んだのか解らないが、気づいたら激の名前を口にしていた。
それに激は嬉しそうに微笑み、口唇に悪戯にちゅっとキスをした。そうして、爆の華奢な足を持ち上げ肩に掛け、一気に奥まで突き入れた。
「ひ、あ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
衝撃を受けた悲鳴が爆の口から迸る。
「あぁ……あ……っ……」
「……痛え?」
嬌声と共に溢れた涙を口唇で優しく拭う。
「ん……大丈……夫……平気、だ……」
凄く奥まで激が入って、少し苦しいような気もするけど。
潤んだ双眸と、濡れた口唇で爆にそんな事を言われ、激の理性はいよいよ吹っ飛んだ(吹っ飛ぶだけの理性があったのか甚だ疑問だが)。
「ぁ……っ!?」
浮遊感。より腰を高く持ち上げられたのだ。
「なっ……や、やだ!」
全て激に暴いている姿勢に、爆は紅潮する。
「すぐ終わらすから」
あやす様に言い、奥まで入った自身をゆっくり動かす。
「んっ……は、ぁ……あっ……」
鼻に掛かった甘い声が聞こえる。
「げ、きぃ……あぁっ……」
蕩けた瞳に捕らえられ、激の心臓がドクンと響く。
「……誘うなよ……乱暴したくねーんだから」
ぼそっと呟いて挿入を速く大きくする。爆もそれに比例して乱れる。
「あぁッ!あッ、あんン!げ……き!激……-------!」
「-------ッ!」
爆が果てると内部の締め付けが増して、二人ほぼ同時に達した。
「あーもうッ!貴様はどうして無茶ばかりするんだ!」
無理な体勢を強いられた爆は腰が痛かった。
「俺は悪くねぇ。オメーが可愛いのがいけない!」
「言い訳にしてももっとマシなのを考えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
爆は側にあった枕を引っ掴んで激に力一杯ぶつけた。が、何せ物が物なのでダメージは少ないようだ。チッ(←舌打ち)。
それはそうと。
(……結局、激とやってしまった……)
あれだけ決意を固めていたのに……。シーツに包まって爆は自己嫌悪に沈んだ。
「別に落ち込まなくてもいいのに」
「……やかましい……」
自分の横に出来た白い小山(爆)を眺め、やおら激はぱちんと指を鳴らした。
「よし、だったらこうしよう。オメーここに住めよ」
「はぁ?何だいきなり」
白い山から爆は顔を覗かせる。
「そんでもって家賃代わりにやらさせてくれればいいや。俺も幸せ爆も幸せ。うん、完璧!」
顎に指を添えてキラン☆と輝く激。
「……オレは何だが根本的な所に間違いがあるように思えてならないが……」
「気のせい気のせい」
ぱたぱたと手を振り気楽に笑う。
爆は眉間に皺を寄せ、激を見ていたが。肺に溜まった空気を出すようにはぁ、と溜息を付いた。
「……解った。オレもそうそう外をうろつく訳じゃなしな」
定住出来るのならそれにこした事はない。
それに。
自分が承諾した事でわーいと子供のように騒ぐ激を見たら、何だか反対する気も起きないのだ。
何故か、起きないのだ。
「じゃぁ約束にキスでも!」
「調子に……乗るな!」
ゴ!と激の額に爆の拳が決まった。
<言い訳>
えーと……どこから言えばいいものか……
いえね、前回の終わり方から話を作ろうとすると、どうしても話が自分のあまり得意でない切な系に行っちゃうワケでして。
よーするに詰まってしまいまして。
んだったら1からやり直すべー、とまぁこんな経緯で。ホンマすみません(謝)