Revenge Tail★
「はぁ……」
この所、溜息ばかりついている。雹本人も自覚はしている。が、止められないのだ。
その原因はついこの前……ネコ化するといういかにも胡散臭げな薬を通販にて入手した雹様は、チャラで人体実験をした後、爆に使用し……
その時の、めくるめく甘美な一時が忘れられないのだった。
(あぁぁ、爆くんに生えた耳とシッポ……濃いグレーの虎猫みたいなので……僕が可愛がってあげるとピクピク反応するんだよねぇぇぇ♪vvv)
うふふふうふふと鼻血を垂れ流しながら自分を抱いて悶える雹の姿は明らかに怪しいを通り越して危なかった。
そのまま暫し、過去の回顧録を3回程繰り返し堪能した後、雹はガタ!と席を立った。
(よし!もう一回使おうっとv)
思い立ったら雹は早いのだ。
「……貴様、妙に機嫌がいいじゃないか?」
「え?そう?いつも通りだけどなぁ」
ギク、と内心うろたえながらも外にはどうにか出さずに済んだ。
これからまた、あの夢のような時間が来るのかと思うと天にも昇る気分だ。顔もにやけようというものである。
「まぁ機嫌がいいのも当たり前だけどね。だって僕は爆くんといると幸せだから♪」
「……アホ……」
と言う爆の頬が赤いので、これは照れ隠し。
「はい、今日のデザート。イチゴのムースババロアだよ」
と言って、爆と自分の分を運んでくる。勿論これに例の薬が入っているのである。
向かいの席に座って、爆の食べる様子を鑑賞する。爆が自分の作った物を食べている、というだけでも見る価値があるのだ。
ニコニコ笑いながら、爆がババロアを口にする瞬間を心待ちにしていると。
「……紅茶が飲みたいな」
「じゃぁ淹れて来るよ。爆くんは座ってて」
そして実に手馴れた手つきで紅茶を注ぐ雹。爆のにはお砂糖二つ。自分のにはミルク。
「お待たせ」
雹からカップを受け取り、香りを楽しんでからコクン、と一口飲む。その仕草も雹は見逃さずに悦る。
そして、スプーンでババロアを掬い、口に含んだ。
(食べたぁぁぁぁぁぁぁvv)
よし!と見えない所でガッツポーズ!
「……雹……何度も言うが、人が物を食ってる所をじっと見るな」
「だって爆くん食べ方も可愛いんだもぉぉんvパクパクって感じでさぁv」
と言って自分もババロアを一口。
「あー、おいし♪」
この後の事を思えば味も格別だった。
(僕も爆くんもお風呂に入ったし、いよいよだね〜〜♪)
歩く足取りも軽い。
(計算でいけばもうそろそろ耳やシッポが生えてくる頃……あ〜、またあの爆くんを眺めれるなんて、僕って何て幸せなんだろうv)
などと思う雹様は本当に幸せなヤツである。
ただ今の雹の脳内では、ネコ耳の生えた爆がちょん、と小首を掲げて自分を見るビジョンがある。勿論現実の爆はそんな事をする筈も無いのだが。
(待っててね、爆くんv今行くよ〜〜♪……って何か頭がむずむずするなぁ)
毎日丹念に髪の手入れをしているのにおかしい、と頭に手をやり……
(…………)
まさか!そんな!!いや、でもこの感触は!!!
やっぱりなのか―――――!?
「……爆くん!!これは一体どういう事なんだい!?」
バーン!と乱暴に爆の部屋の扉を開ける。雹の言う「これ」とは勿論……
耳と腰からぴょんと出た、ネコの耳とシッポ。である。
この家には爆と自分しかいない。自分でやった覚えがなければ必然的に爆しかいないのだ。
爆は騒がしく喚く雹を軽く一瞥し、
「どれだけ貴様と一緒に居ると思うんだ。顔を見れば何か企んでいるかぐらいは解る。
貴様に紅茶を淹れさせた隙に取り替えたんだ」
「……そう……」
雹の発するものに冷気が帯びたのを感じ、爆は慌てて振り返る――が。
「――ッつ!?」
痛いくらいに肩を掴まれ、そのままベットへと押し付けられる。
「何を……ッ……」
「爆くん……僕の事騙したんだ……?」
雹はかなり頭にキてるようだ。目完全にが据わっている。ネコの耳が笑いを誘って仕様が無いのだが。
「許さないよ……お仕置きだ……」
「馬鹿、ちょ……ッ!!」
制止の声を掛けようとした口は、噛み付くようなキスに塞がれた。
「ん――ッ!ンンンン―――ッ!」
バタバタと足を暴れさせて抵抗を試みるが、この細い雹の体躯から何処から沸くのか不思議な程の力で押さえ込まれては、まさに手も足も出なかった。
「ンン……ッ!?」
口付けたまま、邪魔な物を取り払うようにパジャマを左右引っ張った。ピン、と張った衣服からボタンが飛ぶ。口を塞がれたまま爆は抗議したが、もちろん聞き入れてはくれなかった。
「……はッ!雹!少し落ち着け!!」
普段からある意味キレてる雹にそんな事はおそらく無理である。
舌や口唇で爆の肌を愛撫しつつ、手早く下衣も脱がせてしまう。爆が手で払い退けようとする前に幼い自身を口に含んだ。
「いぁ……――ッ!」
腹筋を使って少し起き上がっていた爆は、熱い粘膜に包まれた感覚に腰から下の力を失い、ベットへ倒れこんだ。
「あッ……う、ん……!ンン!」
嬌声が上がるのを反射的に手で押さえる。いつもならそれを声が聞きたいからと縛ってでも止めさせる雹だが、今日は爆を昂ぶらせる事だけに集中しているらしい。
それだけ、容赦ない。
「く……ふッ……ンぅ!ンンン!」
激しく追い立てる熱に爆の目に涙が浮かび、堪えるためにか首を振る度にそれは散った。
いつもならこんなに急激にはしないのに……
そんなに怒ったのだろうか、と爆が思案している内に熱は爆の許容を超えた。
「あ……ッ……あぁぁ――――ッ!」
ビクン、と爆の肢体が撥ね、雹の口腔に放ってしまった。……まるで嵐のように過ぎ去って、耐える事も出来なかった。
「はぁ……は……」
いつもより体力を消耗したような気がする。溜まっていた涙が数滴零れた。
口の周りを清めながら、ベットの上でくったりしている爆を楽しそうに雹は目を細めて見た。
「んっ……」
あまりにも早く吐き出してしまったためか、身体の中に熱が沈殿しているように思う。そんな状態では、腕を引っ張られて起き上がるという事すら億劫にさせた。
雹の胸に預けられ、凭れるものが見つかってほっとしたのか爆は目を綴じた。が、頬を擽る異質な感触にすぐ目を開く。
頬に触れていたのは、雹のシッポだ。
「…………?」
何故これを自分に見せ付けるのか意図が解らず、爆は首を傾げて訝る。
雹は爆の頭に口付けながら言った。
「……今日は、これを爆くんに入れるの♪」
告げられた内容に爆の頭が真っ白になる。
「なっ……えっ……こ、この前は挿れないって!」
「あれは爆くんのだったでしょ。これは僕のだからいいのv」
顔を殊更赤くした爆は腕を突っぱね、雹から離れようとしたが押さえこまれ頭を撫でられる。まるで言い訳のきかない子供をあやす様な雹の仕草にむっとする。
背筋を伝う柔らかい毛の感触に、爆は切羽詰った声で言った。
「ば、馬鹿!止めろ!!」
「ダ〜メ。お仕置きv」
「やっ――――!」
最初、指で掻き回してある程度慣らしそれからシッポを埋めていく。
「やッ!あッ!ああぁぁ!」
今まで感じた事ない感覚に、爆はどうすればいいか持て余す。
「い……やぁ!やだぁ!」
「爆くん……どんどん入っちゃうよ♪」
「あぁぁぁぁッ!」
ズ、とまた入っていくと、爆の背が反った。
中にあるシッポが内壁を擽って……凄く感じるのに今ひとつ物足りない。
「……そろそろ無理かな……」
「あぅッ!……く、んン!」
入っていく速度が遅くなり、力任せに捻じ込むと爆が苦痛の声を出す。挿れたままにしておくと、堪えられなくなった爆がまた胸に倒れこむ。そして自分を見上げた。
「はッ……ダメ……苦し……」
「…………!」
涙で潤んだ双眸を向けられ、雹は雷に打たれたように戦慄する。こういう爆は、普段から想像出来ない程の艶がある(特に雹視点では)からだ。
「爆くん……わざと、じゃないよね……?」
「…………?」
雹の言った意味が掴めなくてきょとんとする仕草も今は凶器だ(くどいようだが雹視点)。ついでにその凶器は雹ばかりでなく爆に返ってくる。
「ひゃ!……っあぁぁぁぁ!?」
敏感になった内は雹がシッポを触ったか否かもちゃんと伝えて、それすら刺激になる。
それに驚いていると、次に雹が律動を真似するようにシッポを出入りさせた。
「い、いやッ!はッ、あ、あん!」
耳元で弾ける声に触発されたのか、動きが速まる。
「あ!くぅんッ!んん―――!」
自分の声に恥らった爆が手を当て、それを塞いだ。が。
「ダメ。さっきの分も可愛い声、聞かせてv」
「あ、やッ……」
案の上雹に掴まれ、自分のバスローブの紐で縛り上げてしまった。手を雹の背中に回されて縛られたので、自分の元に持っていく事は出来ない。
「やだ!ひゃ、あぁんッ!!ああぁぁぁ!」
「クス、可愛いー……爆くんの声、聞いてると僕が蕩けそう……」
「や、ぅ……はぁんッ!」
うっとりと陶酔したように呟く雹。
「……イキたかったら、イッてもいいんだよ?もうこんなにして……」
「あ!やだ!触るなぁッ!」
再び掲げていた自身も弄られて、爆の熱はいつパンクしてもおかしくなかった。そうならないのは偏に爆の強靭な精神故だろう。
「あっ……あぁぁぁぁ……ッ!」
それでも消えない熱は溜まっていく一方だから。解放が近い証拠に身体の震えが全身に回っている。
「爆くん……v」
「あ……」
耳を舐られ、そこも感じる爆はそれだけで達してしまいそうになる。
「やだ……ッ!やぁ……!」
爆はむずかる様に懸命に首を振る。
嫌なのに。こんなのでイくなんて……
「でもイきたいんでしょ?」
なのに雹は全然解ってくれていない。
……そもそもどうして自分がこんなめに遭っているのか。悪いのは最初に自分を嵌めた雹の方じゃないのか?
段々と湧き上がる怒りに爆の身体から一時的に快楽を押し出した。
「ん?」
爆が自分の肩口に顔を寄せる。そして――そこに思いっきり歯を立てた!
「いっ―――たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
手加減なんて一切なしに噛んだので、かなりの威力だったらしい。雹の悲鳴が何よりそれを物語っていた。
「何をしるのさ!爆くん!!」
とても痛かったらしく、雹の目には涙が浮かんでいる。が、それに罪悪感なんて覚えない。
「喧しい!何かしているのは貴様だろうが!」
そりゃそうだ。
「だってお仕置きだもん」
ぐす、と啜りながら肩も摩る。
「だから……それがそもそもおかしいんだろうが……」
こめかみをヒクつかせながら言う爆。
「だっ……て……」
雹はしょげ返ったみたいに頭を垂れる。
「……悲しかったんだから……凄く……爆くんに疑われて……」
「雹……」
肩を震わせる雹に、爆は顔を寄せた。そうして耳の側まで行き――
「だぁぁぁから、貴様が疑われるような事をしたのがいけないんだろうがぁぁぁぁ!被害者面をするなぁぁぁぁぁ!!」
「ば、爆くん……み、耳が……!」
至近距離で叫ばれて鼓膜が千切れそうだ。まぁ爆としては手を縛られて足も届かない現状で、雹にダメージを食らわすにはこれぐらいしかないのだ。
「黙れ!代わりにワンタンでもくっ付けとけばいいだろう!」
「爆くん……酷い……」
うりゅ、と雹が潤む。
「全く……オレが嫌だっていっても聞かないんだから……」
打って変わって幼さも交えた拗ねた声に、雹はふと気づく。
「ねぇ爆くん……僕のでイキたいの?」
身の蓋も無いストレートな雹の言葉に、爆は肩まで真っ赤になる。
「ばっ、ばっ、ばっ、馬鹿な事をあっさり言うな!」
「そうなんだ〜。な〜んだ、だから不機嫌なんだねv」
「喧しい!違う!そうじゃない!!」
「だったら言ってくれればいいのにぃ〜僕が爆くんを無視する訳ないだろう?」
ついさっき無視されたばかりなのだが、爆くんに求められたという事でハイになっている雹にそんな事実は意味を成さない。爆は嫌という程解っていたから何も言わなかった。
「あげるよ。いっぱい」
「え……あっ……!」
ずるり、と奥深くまで埋め込んであったシッポが出て行く。纏わり付く内壁も一緒に出てしまいそうな感覚に、爆は雹に縋り付いた。
「くふ……んっ……んッ……!」
「辛い?でもあと少しだからね」
「う……ぁっ……あ―――!」
少し勢いつけて、最後まで引き抜く。か細い悲鳴を上げて、爆は達してしまいそうになるのを堪えた。
「んッ……」
「爆くん……v」
決して一人でイこうとしない爆を愛しく思いながら、顔中にキスを降らし優しく横たえる。
足を開かせ、雹はその間に入り込んだ。
「あ……ひょ……う……ッ」
爆の呼びかけに応えないで今度は身体に跡を付ける。その際に爆の身体がピク、と反応してくれる。
足首を持ち上げて、挿入しやすい体制になると、何故か爆が慌てた。
「ちょ……ちょっと待て……!」
「?」
それは嫌がっているというより、困っているという方がしっくりして。
雹は爆の照れ隠しだと思い、行為を進めて行く。
「あッ……ひょ、う……待てって!」
すでに熟れていた箇所は絡みつくように雹を迎えた。
「あぅッ!やッ……ダ、メェッ!や……あぁぁぁぁぁぁッ!!」
「―――ッ!」
甲高い嬌声と共に、熱も弾けた。絞り込まれる内部に雹も達しそうになるが堪えた。
「あふ……ん……」
ぼう、と解放感に恍惚する爆。それを邪魔するのは野暮なのだろうが……
「爆くん……挿れただけで、イッちゃった……?」
途端爆の顔が真っ赤になり、顔も見れないというふうにシーツに沈む爆。
「だ……から、ちょっと待て……って……!」
「そんなにヨかった?」
「〜〜〜〜ッッッ!!」
ボン!とまた爆が沸騰する。
「嬉しいなぁ……」
その声は決して揶揄するような類ではなく。そろそろと見上げると、雹は慈しみを隠さず爆を見詰めていた。違う意味で爆の頬が紅潮する。
「ひょ……んっ」
キスをした。最初の乱暴なものではなく、溶けるように優しい。
終わると何時の間にか綴じていた爆の双眸がゆっくり開く。それを待ってから雹が言う。
「爆くん。好きだよ」
それを聞いて、爆が言う。
「知ってる」
二人は微笑んで求め合った。
★☆後日談☆★
「雹〜……」
「ん?なぁに爆くん?」
「なぁにじゃないだろ……その服は何だ!」
「別に変わった所はないと思うけど?」
そう、雹の着ているのはごくごく有り触れた何処にでもありそうなものだ。
ただ、肩が開いていて。
昨日付けた爆の跡(噛んだ時の)がばっりち見える。
「隠せ!そのままで外に出る気か!?」
「ヤダ。折角爆くんが僕に付けてくれた跡だもん。消えるまで見ていたいし他のヤツに見せ付けたいんだv」
にっこりと言われて爆は軽い頭痛がした。
「でもまぁ、爆くんがどうしても嫌だって言うんなら、条件しだいじゃきいてあげない事もないな」
「……何をすればいいんだ?」
半ば諦めた表情で言う爆。
「うん。もう一度ネコになってよv」
「……あ?」
爆の目が点になる。
「だって僕どうしてもあの時の爆くんが忘れられなくてさ〜。あ、爆くんは普段でもとっても可愛いけどねv
そうだ、今度は二人でネコになってさ……」
「い、嫌だ!そんな事は!!」
爆は思いっきり拒絶した。
「じゃあ僕はこのままで外に出るだけだよ」
「う……」
逃げ場を全て塞がれた爆の出した結論は。
それは雹だけが知る。