Mischief Telephone
舌まで差し込んだ深い、溺れるキス。
出会い頭にするには濃厚すぎる。
よくなついた大型犬が飼い主の顔を嘗めるみたいに、何度も何度も迫ってくる。逃げる顔を追いかけて。
「ん……んんゥッ……ン!」
ドンドンと強めに胸を叩いて、ようやく解放してくれた。
「は……ぁ……き、さまはぁ〜……いきなりキスなんか……」
しかも昼間には向いていない類いのものを。
「キス?キスで終わらせるつもりじゃねーんだけどなぁ」
抱き締めていた手で服を脱がしにかかる。ついでに露になった肌に舌も這わす。
「ばっ……激!」
「若人2人が密室でやる事といったら一つっきゃねーだろー♪ここまで俺を餓えさせた責任、ちゃんと取れよな」
「貴様は何時会ってもこれじゃないか!」
脱がされた服をまた着ようとしても、首筋に少し歯を立てられ、身体が硬直する。
「や……っ」
「話ならヤリながら出来るしよ、それにこうでもしねーと、すーぐどっか行っちまうからなぁ……オメーは……」
「んっ……」
続きは柔らかいベットで。
激は爆を優しく抱かかえ、寝室へ向かう。
「……んっ……ふぅ……」
「爆」
限界以上に溜まらせた熱を、よくやく解放されて爆は少し放心気味だ。
「やッ……あ……!」
くちゅ、と濡れた内部を激の指が掻き回す。
「やッ……ん!あぁぁ!」
(もう、いいよな……?)
と、誰に尋ねているのか、激は爆の様子を窺う。
さっきから丹念に解しただけあって、指はすんなり入ってくれる。爆の方も痛みはもうないらしい。ただ感覚に悩まされて涙を流している。
「ふぁ……!」
ずるんと結構の深さまで入っていた指が抜かれ、思わず鼻にかかった息が漏れる。
「力抜いとけよ」
「ん……」
頬や額に口付け、口唇から爆が震えたのが解る。
足を開かせ、何度もキスとして爆を安心させながら解れた秘部に自身をあてがい、ゆっくり挿れていった。
「あ……ッ、ああぁぁぁぁ……!」
か細い悲鳴が上がる。
「痛ェ?」
「ふ……う……」
呼びかければ潤んだ瞳が見つめ返して、元々足りない理性がものの見事に吹っ飛んだ。
「――――ッ!ひぁぁぁぁぁぁ!!」
細い足首を掴んで肩に乗せ、挿入しやすい格好にし一気に全て埋め込んでしまった。
「あ……あ!……げ、き……!」
「悪ぃ、どーもオメーを前にすると余裕なくなる」
恨みがましく睨む爆に、苦笑するしかなかった。
と、その時に。
「……爆、オメーの携帯鳴ってるぞ」
「あ……?」
確かに鳴っている。
しかし、この状態で出たとしても話せるわけがない。
放って置こうかどうしようか、爆が考えてる内に激が出てしまった。
「ちょ……!激!」
「はい、もっしー……って何だ雹かよ」
電話の相手は雹だったらしい。
「あ?いやこれ爆の電話だぜ?……っせーな、俺が出ちゃ悪ぃのかよ。ていうか何でオメーが爆の番号知ってんだ!?」
(〜〜〜電話で喧嘩する前に抜け!馬鹿!)
繋がったままで普通に会話してる激に呆れを通り越した。
『もー!いいからとっとと爆くんに代われよ!!』
「誰が……!」
とその場で切ってしまおうか、と思ったが。
「ん。解った。ホラ爆、雹からだ」
「え……?」
当たり前に渡されて戸惑う。
(こんな状態で喋るわけないだろ!渡すな!!)
『爆くん?』
代わると言っておきながら爆が出ない事に、雹はいぶかしむ。
「あー、爆出れねぇってよ。ま、仕方ねーなだって今……」
「もしもし!オレだ!」
激がとんでもない事を言う前に電話を引っ手繰った。
『あ〜、爆くんだ〜♪』
砂糖でも溶かし込んだ勢いの甘ったるさだ。
『ねぇ、爆くん何してたの?』
激と、エッチな事を。
……言えるか!
「……そんな事はどうでもいいだろ。用件は……今度の日曜?……まぁ、空いてるといえば空いてる……」
爆の方しか聞こえないが、だいたいの会話の全体像は解る。
多分、雹は爆を食事かなんかに誘おうとしているのだ。
爆。
激は爆にだけ聞こえるように言う。
電話、しっかり持ってろよ。
そしてニィ、と意地悪く笑う。
……すごく嫌な予感……
それは的中した。
事もあろうにこの状態のまま律動し始めた。
「――――!」
慌てて口を押さえた……でも。
『ねー、爆くん聞いてる?』
受話器の向こうの雹は、そんな事も知らずに話し掛けてくる。相槌を打たなければ怪しまれる。
「ああ、聞いてる……――ッッ!」
丁度、爆が最も感じる箇所を突いてきた。
「は……ぁ!……んでもな……ッ!」
(声、が……!)
『爆くん?』
「……ほん、とに……何でも……ッ……な……ふぁん!」
熱を帯び始めていた前に指が絡まり、ついに声が外に漏れてしまった。こうなった以上、もう押さえられない。
「や、あ……ぁ……!……ッん、ごめ……ひょ……か、掛けなお……あぁぁぁ!」
「……っと」
爆の手から滑り落ちた電話を激がすかさずキャッチする。
「やー、また俺だけどー。何か今爆ダメみてーでーまた掛け直すってよ。じゃ、な」
ピ、と電子音が聞こえ、電話が切れた事に爆はほっと息を吐く。
そして。
「……激〜……」
「あー……やっぱ怒った?」
「当たり……前、だ!」
(……こりゃぁ、後でバクシンハぐらいは覚悟しとかなきゃな……)
「お詫びにたっぷり気持ちヨクしてやっから♪」
「いらな……ン!……」
ピッタリと、隙間無い口付けは爆の意識を霞ませて行った。
「あ!……んっ……」
与えられる快楽に身を委ねていた爆は、唐突に入れ替わった天地で少し我に帰った。
「ん……何……?」
状況を確認してぎょっとする。
激が寝転がり、自分はその上を跨ぐ格好に。
じゅぷ……とより深くまで入った激が、熱く濡れた内壁に擦れて淫らに音を立てた。
それに恥らっている間にも、どんどん腰は落ちていく。
「あん……!げ、き……!」
「な。自分で動いて」
「…………!」
「お願いv」
自分より年上の男に可愛らしくお願いされても。それでも激はニコニコして爆が動くのを待っている。
自分の要求を撤回する気のまるでない激に、爆は溜息をした。
……何で、こんなヤツに惚れてしまったんだか。
激の腹に手をついて、ぐっと腰を上げる。
自分で動くと中の激がどう動くのか、とてもリアルに解ってしまう。
「ン……ん、ん……!」
「……気持ちいー……」
爆の媚態を下から全部眺める事が出来て、激はご満悦だった。
「く、ふ……んぁ……!」
何だか自慰をしてるみたいで気恥ずかしい。
そうしている内に腰の力が抜け、足がガクガクと震える。
「……激……」
もう、いい加減にして欲しい。
目で訴えると激に通じたらしい。
「そーだなー、いっぱいサービスして貰ったし、ご褒美しなきゃな」
「あ……!」
激が繋がったままの爆を抱きながら起き上がる。
「やぁ……!あ……深い……!」
「好きだろ?奥の方」
「知ら……ない……!
「ふーん。じゃ、知ってるのは俺だけって訳v」
「ひぁ……ン!……は、ア……!」
下から突き上げると、その分だけよりも爆は妖しく乱れてくれる。
「な、爆。最後のお願い……俺の名前、呼んでいて」
「んっ……?げ、き……」
怠くなってきた身体でも、舌ったらずで呼んでくれる。
「そう、イイコだ……」
汗に濡れた前髪をかきあげ、額にキス。
「あぁ……はぁん!あッ、……激……激ィィ……!」
「そうやって、爆……イクまで俺の名前呼んでな……」
熱が籠もり、キュウと締め付ける内部に自分も解放が近い。
「んぁ……激……激……!」
激しくなった律動に、爆は迷子になった子供みたいに激の名前だけを繰り返した。
「あ!く、ン!……はぁ!げ、きぃ……!」
「……っ!」
「激……――――!」
望みどおりに爆は激の名前を呼びながら、果てた。
(あ〜、寝てる顔も可愛い……vv)
爆の意識がない時、激は爆にめちゃくちゃ触りまくっている。額にキスしたり頬にしたり髪をわしゃわしゃとかき回したり。
本人曰く、普段は素直に触らせてくれないから触りだめをしているのだという。
さて、と。
先程傍らに置いておいた爆の携帯を手に取った。そして―――
『な〜んだ、切れてねーじゃん。失敗失敗♪』
ピッ。ツーツーツーツー……
「…………」
ガチャ。
夕食の支度が整ったチャラが呼びに来た。
「雹様、食事の……」
ドアを開けたチャラが見たのは、受話器を握り締めたまま魂を出し、人類の限界以上噴出した自らの鼻血の水溜りの中で撃沈している主人の姿があった訳で。
「…………」
バタン。
チャラは無かった事にした。