シトリンとオニキスの睦言・番外編2





 高校に上がる事。
 それは、世界が広がるという事で。




「や、や……やぁ……っ!」
 むずがる子供みたいに、嫌だと首を振る。それだけの動作で、体内にある帝月と、粘膜が擦れる淫らな水音がする。
 何度も何度も達したせいで、中から滲む分泌液が僅かな隙間から滴り、天馬の下半身を濡らしていた。
「ミッチ……だめ、もう、だ……め………んぁ……!」
 きゅ、と胸の突起を摘まれ、じぃんと身体の奥が痺れる。
 今日の帝月は、何だか、変だ。
 いつもは、いっそ気恥ずかしくなるくらいに、大事に大事にゆっくりと身体を慣らしてくれるのに。
「きゃあ、ン!!」
 くい、と片足を担がれ、さらに奥へと自身を埋め込む帝月。
 今まで入った事のない領域を犯され、初めての時のような恐怖に似た感情が起こる。
「あ、ぁん……いや、無茶……んっ………すんな、……ぁあ!」
「無茶、じゃないだろう……?」
 カリ、と歯を耳に立てて弄ぶ。
「中……絡み付いて……よく、締まる……
 本当は、悦んでるんだろう……?」
「ち、が……ふぁ、ん……」
 ちゅ、と唇を重ね、舌を絡ませる。
 上からも下からも、帝月が入ってきて、天馬の意識がいよいよおぼろげに、虚ろになって。
 もう、帝月に任せるしかなかった。




 ----日明さんて、いいよな
 ----日明……あぁ、てっちんの事か。んで、何がいいって?
 ----いいじゃん。ああいう子。最近の女って怖くってさ。男をキープだのゲットだの……でも、日明さんはそんな事しなさそうだしさ。きっと誰かと付き合った事も、キスもした事ないぜ。そういう子を自分色に染めるって、なんかヨクねぇ?




「は、ぁ……あっん!あ、あー……!」
 嬌声に切羽詰ったものが感じ取れて、身体の撥ねる間隔も短くなってきた。
 もうすぐ……だ。
 その時の表情を思い出して、無意識に唇を舐める仕草をする帝月。
「や、ぁ、っ!またぁ……あぁん!」
 今日、何度目か解らない、迎える絶頂の予感に戦く。
「天馬………」
 眼を綴じたままの天馬に、顔を寄せる。
「お前、今、……すごくいい表情してるぞ……」
「ばッ!ばかぁ……!!」
 顔を横に背ければ、耳を詰られ、ゾクゾクしてしまう。
 何だか、さっきから羞恥を煽るような事ばかり言われている。それで何が困るかというと、身体が忠実に反応してしまうという事だ。
(やだ……これじゃ、オレ、変態じゃん……)
 ひく、と喉を引き攣らせ、流れた涙は快楽の為のものでなかった。
 それを詰まらなそうに、帝月は舐め取る。
 もっと自分に酔ってしまえばいいのに。
 他のヤツにも解るくらい。
「ん、ん………!ッ、ひ、やぁ!?」
 腰に回っていた帝月の腕が、つ、と結合部をなぞった。
「なっ、あ………あぁぁぁんッ!!」
 そのすぐ上の粒を転がされ、一層甲高い声が天馬から沸き上がる。
 ----そうだ、この声が聞きたかったんだ。
「んぁ……!だ、だめぇ!みか……!!そこっ、!」
 もう懇願に近い声色で言ってみたが、帝月がいう事を聞いてくれなさそうなのは、わざわざ様子を伺えなくても解った。
「だめッ!いや、やぁぁぁぁッ!!」
 ----もう、おかしくなる。
 そんな、言われてないセリフが、帝月に届いた。
 でも、止める気はさらさら無かった。
「ひ、ん!あ---------ッ………!!」
「………っ、」
 一度に複数過敏な箇所を弄ったせいか、声を抑える事も出来ず。
 空気に余韻を響かす大きな声を残して、天馬は達した。




 全く、勝手な事を言ってくれる。
 クラスで、勝手に耳に飛び込んだ会話。帝月のクラスは天馬とは違う。にも関わらず、話題に上っていた。それだけでも、頭に来るというのに、内容である。
 聞いた途端、沸き起こった感情のままに相手を葬ってやろうかとも思った。さすがに、しなかったが。
 天馬に会えば、こんな気持ち、すぐに浮上すると思った。
 のに。
 クラスメイトにあんな言い方されてるのに全く気づかないで、いつもの、帝月の知ってる天馬だという事に----どうしてか、無償に腹が立った。
 誰かと付き合った事も、キスをした事もない?笑わせてくれる。
 天馬とはもう4年になる付き合いで、キスどころか、何度も快楽の絶頂に陥っているのだから。
 何度でも、自分が与える感覚で。
 何度でも。
 何度でも----




「ミッチーの、馬鹿!あほ!すけべ!!」
「……すまない。本当に、すまない」
「………馬鹿ー!!!」
 一通り罵り言葉を口にして、ある程度すっきりした天馬は、少し余裕が出来た。
「な。何か、あったのか?」
「………何か、と言うか………」
 頬を紅潮させ、気まずそうに帝月はクラスメイトの話を聞いた経緯から話した。
 で、話終わって。天馬は。
「……ずりぃ」
 ぽつ、と零されたのは、そんな言葉で。
「……は?」
 まさかそんな返事が出てくるとは思わなかった帝月は、間の抜けた返事をしてしまう。
「ずりぃずりぃよミッチーてば!!オレだって、オレのクラスだって、女子がミッチーの事格好いいって、いっつも言ってるのに!」
 本当に少しは怒っているらしく、む、と眉を眉間に寄せて頬を膨らます。
「ミッチーばっかり自分に正直で!」
 自分は我慢しているのに、と言う。
「………なら」
 つい先ほどまでのどん底だった気持ちは何処へやら。
 相手も同じだった事とも手伝って、帝月は見た目では解り難いが、とても舞い上がっている。
「お前も、自分に正直になればいい」
「え………」
 天馬は全裸で、帝月はズボンだけ穿いた半裸で。
 そして、さっきまでしていた事を考えると、帝月のセリフは。
「……………!!!!」
 ぼひゅ、と肩まで真っ赤になる天馬。
「ななななな、何言ってんだよ!!オレは!怒ってんだぞ!?」
 真っ赤に慌てる天馬を、帝月は何の苦も無く組み伏せる。
「わっ………!」
「……さっきので終わるのは、嫌なんだ」
 耳に直接吹き込まれた声。
 ゾク、としたのはさっきのと一緒だけど。
「…………………」
 だめか?と帝月が雰囲気で語っている。天馬も、それには言葉では答えずに、そっと背中に手を回した。




「あのな、ミッチー。オレ、ミッチーの事大好きだから、酷い事されても嫌いにならないから。
 だから、ちゃんと言ってくれな?」
 情事後、天馬が言ったセリフに、帝月は撃沈したという。




<END>





ちょっと鬼畜風味に。
でもてっちんは、どんな事されても許しちゃうんだろうなぁー。
まぁ、これからはないだろうけどさ。