それは健康診断の次の日であった。
何故健康診断が関係するのかというと、大いに関係があるのだ。
天馬が今ご立腹なのは、帝月の身長に関係がある。
この度帝月、175センチになった。
「ずりー!ミッチー、ずりぃー!!」
「……ずるい、と言われてもな」
家に招いてからこっち、ずっとそんな風にそっぽ向いて拗ねている。まぁ、家に入ってくれただけマシだろうか。
「だって!オレなんかもう身長伸びてねぇんだぞ!?ミッチーだけずるい!!」
そんな風に言われても、帝月だっけ伸びたくて伸びた訳ではない。勝手に成長したのだから。
まぁ、天馬にもプライトというものがあるんだろう。会った頃は、むしろ天馬の方がちょっと高かったのだから。
はぁー、と帝月が溜息つくと。
「…………、」
す、と脇から帝月の腕が生えてきた。そして、当然のようにボタンを外しにかかる。
「ミ、ミ、ミ、ミッチー!!?」
「成長するのは、何も背だけじゃないだろう?」
後ろを振り向けば、意地悪な笑みを浮かべている帝月。
「背、背だけじゃないって………?」
「中身、……とか?」
「や……」
ブラジャーのホックを、つい、と撫でるように外す。
(……大きくなったな)
上から覗き込んでも、そう思う。そっと包み込むと、抱きかかえている天馬の肩が震える。
「……下着、一回り大きくした方がいんじゃないのか?」
どうも、この大きさの胸にあのサイズの下着は小さいような気がした。
「だ……って、高値いし………んん!!」
きゅ、と突起を摘まれて言葉に詰まる。
「あっ………」
「そういう事だったら、僕も出すから。いいな、今度買いに行くぞ」
「ふぁ……っ」
舌で耳を舐って言われても、普通に答えられる筈がない。
露になった肌にぴったり付く腕で、天馬がどんどん火照って行くのが解る。
「……久しぶり、だな……」
「んぇ……?」
入学式からずっとあれやこれやで落ち着けて会えたものではなかった。
「だから……少し、飛ばすぞ」
「へ、ぇ、え………?わっ!」
下の下着をするり、と剥ぎ取らされ、声を上げる。
「ちょ、ちょっと待て、風呂入んなきゃ……!!」
「後でいいだろ」
「いい訳……!!」
あるか、とい声は敏感な箇所を撫でられた事で詰まる。
「や……んっ………」
「胸触っただけなのにな……」
もうこんなに濡れている、と、言葉の外で告げる。
「痛いか?」
「んん、ん……!!」
中をまさぐる感覚に、嫌悪も痛みも無い。
それどころか。
「ミ、ミッチー………っ」
「ん……?」
「も、う……」
帝月が欲しいって、今ではすんなり言えてしまう。前はあんなに恥ずかしかったのに。
強請る自分が、とても浅ましくて嫌なのだが、でも素直に言うと帝月がとても嬉しそうに笑うから。
ふ、と帝月が微笑んだのが、頬に寄せられた唇で解る。
「少し、待っていろ……」
「…………っ」
ずる、と出された指に身震いする。未だ帝月に座ったまま後ろから抱っこされるような格好で。今日は布団が無いからだろう。
いくぞ、と囁く振動が刺激になる。
身体をずらされ、帝月の熱を感じたと思ったら、それが、挿ってくる。
「ぁ、あー………ッ!!」
「………ッ、ぅ……」
帝月を埋めとけ、天馬に収め、2人はしばしは荒い息遣いで落ち着かせる。
「……………」
先に少し落ち着いた帝月は、まだ息を整えている天馬の頭を、ことん、と自分の肩に預けさせた。
「ふぁ………」
とろん、とした瞳に、甘そうに濡れた唇。
貪るように、キスをした。
「ミッチー………」
「何だ」
「何だ、じゃなくて……別に抱っこしなくてもいいって」
風呂に向かうまでの道中、横抱きに抱えられて運ばれる。確かに、少しふらふらするけども歩けない事も無いのだ。
「嫌か」
「……嫌じゃねぇけど……」
ちょっと恥ずかしいのだけど。
「なら、別にいいだろう」
「………ぅー」
上手くはぐらかされたような、言いくるめられたような。
でも自分で言ったように決して嫌じゃないのだから、強く止めさせるように出来ない。
最も、帝月の方も例え強く言われた所でやめる気なんてさらさら無かった。
付き合い始めての自分のコンプレックス。それは、同じくらいの体格で、こうして天馬を運んでやる事が出来ない、という事だ。
実は、帝月。
背が伸びた事に、毎回密かに喜んでいた。
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