頭の中がふんわりとしていて。
聞いた事の内容を理解するのに、いつもより少し時間が掛かる。
「前の続き……って………んッ!」
胸の柔らかい感触を愉しむかのように、やんわりと唇で辿る。
「や、ぅ……あ、あッツ!」
ちゅく、と胸の先端を吸われ、先ほど感じた背筋を伝わるものが、さっきより強く襲った。
そのまま暫く、過敏になる一方の其処を弄られ、布団の上に投げ出された足と声が断続的に跳ねる。
「天馬……」
弄るのを舌から指に変え、ちゅ、と頬に口付ける。
「お前がちゃんと拒まないと、僕は止めないぞ……」
「な、に……解んねーよ……っ」
「今されてる事が、嫌かそうでないかを考えればいい」
そう言って優しく微笑み、今度は口唇へ。
「ん………」
こうしてキスされるのも、肌を全部見せるのも。
凄く、凄く恥ずかしいけど。
「……ヤじゃ、ない……」
何度も何度もつばむようにキスされ、少し唇が離れた時、ごく小さな声で言う。
それは本当に小さな声だったのだが、帝月には聞き取れていたらしい。
その証拠に、彼は少し目を見開き。
「天馬、好きだ」
耳から直接、心にまで届くように、セリフを吹き込んだ。
そう言えば、帝月から直接好きだなんて言われるのは、告白されて以来だ、と。
天馬はそんな事を思った。
触れては離れ、また触れてを繰り返すキス。
散々翻弄された胸への刺激も今は無くなり、天馬にとって心地よい時間が過ぎる。
(ん……?)
胸を弄っていた指が、腰元に感じ、さらにその下へ。
そうして、最後の一枚に掛けた。
天馬はぎょっとして帝月を止める。
「な、何!?何、ミッチー!?」
「どうした」
下着を脱がそうとする帝月に、それを必死に食い止める天馬。
帝月は、何を今更、と言った具合に天馬を見る。
「何!?何すんの!!?」
「……お前」
帝月はがっくりと肩を落とし。
「ここまで来て、まだ解らんか?」
「解……る、けど!」
顔を真っ赤に、天馬は言う。
「……こーゆーのって、子供がしちゃ、ダメなんじゃねーの?」
「確かに閲覧は禁止されてるが」
目の前でしぱしぱと瞬きを繰り返す天馬。愛おしいと想う。
「僕はお前に対して責任を取る自信もあるし、避妊もちゃんとする」
「ひにん………」
そんな具体的な単語を言われると、どうも気恥ずかしい。
「やっぱり、嫌か……?」
「ぅ………」
率先してやりたいかと問われれば、返すのはNOだけど。
でも、何か。
ちょっとは。
ちょっとは----して、みたい………
「……………」
どきん、どきん、と鼓動が撥ねる。
大人に隠れて、子供だけの秘密基地を作る時みたいな、そんな感じに似ていて、それよりうんと甘美な。
そろそろと、涙が溜まった目で見上げると、それだけで帝月は解ってくれたみたいだ。
ぎゅ、と天馬が着物を握っているのを、背中で感じ。
それ以外の神経は、全部、天馬を解させるのに集中させる。
首筋や胸に舌を這わせ。
指は。
「ぅんっ……あ、あ……んッ!」
抑えるつもりが零れる幼い矯正。
そんなものを、さっきから至近距離で聞かされ、いい加減、限界の帝月。
指に絡みつく感覚に、自分を埋め込みんでしまいたいと、暴走する欲望を必死で抑制する。
ようやく一本受け入れてくれた、という所なのだ。こんな状態で挿れてしまえば、惨状は免れないだろう。
自分は平気だが、天馬の事を考えると。
天馬の事を想っての上での行為だ。傷つけては、何の意味も持たないどころか、それ以下だ。
早く受け入れるようになってくれ、と、蕩けさすような刺激を加えられている天馬も、溜まったものじゃないのだが。
今まで全く知らなかった感覚を、一番強いもので身体に教え込まれているのだから。
と。
「------ッ!?」
ぞくん、と何か波みたいなものが襲う。
感じている所から、じわじわと足の指先にまで広がっていくような感覚。
「ぁ、や、やぁー……ぃ、やぁッツ!」
この感覚が昇り切った後の自分が解らなくて、首を振る。
「天馬?」
今までとは明らかに違う様子に、何か異変でもあったのか、と一旦指を引き抜く。
「あ……っ」
すると、天馬は泣きそうな表情になり、帝月を見つめる。
(-----あぁ、そうか)
天馬がどういう状況かが解った帝月は、額に軽くキスをして。
足の間に顔を埋めた。
「ミ、ッチー?」
胸を過ぎても下がる事を止めない頭に、疑問を感じた天馬は身を起こそうとするが、その前に。
太腿の付け根の、柔らかい箇所を吸われ、帝月の位置を知る。
かぁ、っとまた熱が上がる。
「や、やだ!ミッチー!ンな所………きゃ、ぁッ!?」
れる、と一番快楽に忠実な箇所に、滑ったものが伝う。
「や、んッ!あ、あ、あぁぁッ!」
周囲だけをじれったく愛撫していたかと思えば、すっかり刺激で開ききっていた内部へ侵入する。
「あッ……!………ッ!」
声すら無くし、浅い呼吸だけが室内に響く。
くちゅくちゅ、と濡れた音が自分から出ているのだと、頭の片隅で思った。
ある程度中を舌で解したら、指に変え、より深い所まで。すぐ横の、白い足がひくひくと撥ねる。
少し顔を離すと、今度はすっかり膨らんでいる突起へ、天馬を登り詰めさせる為に愛撫を加える。
舌で転がすように弄ぶと、天馬からひ、と悲鳴に近い声が上がった。
「………やッ、や、やぁぁぁぁッ!!」
一拍の間を置いて、天馬が激しく抵抗……したいのだろうが、散々愛撫され、弛緩した身体では僅かに動くのが精一杯だ。帝月からの刺激は、そのままなのだから。
「やだッ!ミッチー!其処ッ、やぁッ!!」
嫌だ嫌だというが、それが行為自体の嫌悪でなく、未知の感覚に脅えているだけだ。
ここはさっさと済ませた方がいいだろうと、加える刺激を強くする。
快楽に悩まされる天馬は、ある程度慣れてからじっくり見せてもらおう。今は自分も、蕩けるような快感を味わいたい。
「やぁッ、あッ、きゃ、ぁ---------…………ッツ!!」
一段を甲高い嬌声。
きゅう、と内部が間断的に指を締め付け、そっと指を引き抜くと、こぷり、と液が溢れる。
(イったか………)
天馬の事だ。もしかしたら、自慰なんてした事すら無かったかもしれない。
自分でしか達せ無い身体になったら、と薄暗い願望を、少し頭を振って排除する。
大きな快楽の波は過ぎ去ったが、余韻に身体が震えている。いつの間にか、背中にしがみ付いていた手も落ちている。
身を起こし、天馬を覗き込むと、呆然としたような、虚ろな表情で布団に沈んでいる。
快楽に痺れる子供の身体に、袖だけは通している着物姿、という姿が、酷く退廃的だ。
少し可哀想だが、軽く頬を叩いて戻ってきてもらう。
「………」
ちゃんと帝月が見えているらしく、目が自分を捕らえた時に目に涙が浮かぶ。よく見れば、零れた跡があった。
「み、………」
何かを言いたいようだが、口唇が震えて言葉にならないらしい。
「天馬………」
安心させる為に、軽いキスを何度も繰り返す。安堵したような吐息が零れるのを待った。
「天馬。お前を僕にくれるか?僕を全部、あげるから」
「う、ん……」
こくり、と首が縦に振られる。
ふぅ、と息を吐き出して、今更に緊張していた自分を自覚した。
本当に大丈夫かを確かめる為、指を複数本、挿れてみる。
「あ、くぅ……ッ!」
内部からは侵入を助けるように分泌液が増し、顔を見ても苦痛は感じていないらしい。
「ん……んッ!」
ずるり、と中に入っていたものが抜ける感覚に、喉がなる。
受け入れていた所は薄く開き、もっと快楽を強請るようにひくついていた。
「いく、ぞ………」
「ん………」
掠れて、息の上がった声。
グ、と、何かが自分の中に入ってくる。
「ぁ、あ-------………っ」
か細い声が、ひゅぅ、と声と一緒に漏れる。
「あ、帝、月………!」
何処までも侵入を止めないソレに、少しの恐怖を覚える。
そうすると、帝月が自分の腕を持ち上げ、首に回してくれた。
それだけの仕草に、胸が温かくなる。
「……全部、入った」
はぁ、と熱い息と吐き出されたセリフに、自分の中に何があるか、理解出来た。
だったら、少し痛いくらい、我慢出来る。
「帝月……」
何を言ったらいいか解らなくて、好きな人の名前を呼ぶ。
「……本名、」
「?」
「いつもふざけた呼称ばかりだから……」
ちゃんと本名知っていたんだな、と。
ふ、と帝月が笑った振動が伝わる。
知っているに決まっているだろう、と反論する前に。
「あ、あッ、あぁ……んっ!」
中の帝月が動いて、自分を翻弄する。
ズルい、と睨むと。
キス、された。
<続く>
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