と、ゆー訳で今日は爆の健康診断の日だ。
「〜〜あー、あ〜〜〜〜あぁぁあ〜〜〜」
と、さっきからカイはあーあー机に齧り付いて煩い。
「お前なぁ、少し落ち着けよ」
気持ちは解るけど、と付け加える。
「失礼な。誰が結婚前夜の新郎みたいですか」
「誰も其処まで言っちゃいねーよ」
「うぅぅ、爆殿〜〜」
「……相変わらず俺の話きいてくんねーのな」
何を言っても独り言になってしまう悲しいハヤテであった。
「爆殿ー!何かされませんでしたか妙な所をどさくさに触られませんでしたか!!」
「何、自分の事を大声で喚いているんですか」
こんな時、学年の違いが恨めしいと、爆を抱きしめながらカイは思った(この際デッドの音声はクリアに消去されている)。
最も爆は優しいから、何か用件でも入らない限り、図書室で時間を潰して下校時間を同じにしてくれるのだが。
「えぇいもう、離さんか!!」
じたじたと腕の中で暴れる爆。
しかし、男子平均をやや上回るカイと、女子平均の少し低い爆なので、まさに子猫のような抵抗だ、とはハヤテの感想。
高等部の身体検査は来週月曜日だ。新しい下着でも出そうかな、と思う。
「んで、何か変わったのか?」
別に大した意味のないセリフだった。身長が伸びた体重が増えたくらいの。
しかし。
ぼひ。
爆の顔は真っ赤になった。どう見ても、ハヤテのセリフに原因がある。
「べ、別に何も変わってないぞ。あ、背は伸びたな、3センチくらいだが……」
「爆殿?」
何を隠してるんですか?という意味を込めてカイが聞く。その笑みはちょっと腹黒い。言わないと口で言えない事をしますよと言わんばかりに。
「………………」
はぁ、と息を吐いて、爆は努めて冷静に言おうとした。
「……胸が大きくなってた」
ぼそ、と。
しかし言ったのは確かだ。
それを聞いて、カイは。
「………そぉぉぉなんですかー」
至福。
カイの背景に、そんな言葉を貼り付けてもらいたい。
「いやー、何気なく日ごろの自分のしてきた事が、ちゃんと数字になって結果に現れるって、やっぱり気分がいいですねv」
何を言ってるのかを隠せば、けっこう爽やかなセリフだ。
と、言うかカイは何気なく爆の胸を揉んでいるのか。
「へー、胸って揉むと本当に大きくなるぐへはッ!」
「大きくなるというか、胸の脂肪を支える部分が鍛えられるんで、どちらかと言えばバストアップしたというのが的確な事実ですね」
デッドは客観的な事実を、ハヤテに回し蹴りを食らわせて言った。
「だったら爆君、それじゃ、今までの下着じゃサイズ合わないんじゃないですか」
「……うん、ワンサイズくらい大きいのにした方がいいと言われた」
「て事は、今の爆殿はBがっぐふ!」
カイにはアッパーを食らわせた。
身体的な事で気恥ずかしいのか、爆はまだ赤い。
そんな爆の頭を、デッドは撫でながら言う(カイの腕はアッパー食らった時点で外れた)。
「では、今度一緒に買いに行きましょう。丁度、買い換えようと思っていた所です」
そのデッドのセリフで何を想像したのか、上を向き首の付け根をトントンと叩くハヤテ(復活した)。
「-----ちょっと待って下さいよ!」
カイ(復活した)は和やかなデッドに待ったをかけた。
「どうしてそんな一大イベントに私抜きで話を進めるんですか!」
「……一大イベント……って………」
爆は何か言いたかったが、何を言えばいいのか解らないので黙った。
「貴方が来るとろくな事になりません」
断言するデッドにあっさりはいと言ったら、それはカイではない。
「何でですか!私の所業で大きくなったんですから、私が付き添うのが一番妥当で適任でしょう!」
「自覚のないセクハラが一番たちが悪い………」
「セクシャルかもしれませんが、ハラスメントとは違います!ねぇ、爆殿!?」
「……デッドと行く」
爆はそう言った。当然と言えば当然の判断だ。
「そんなぁ〜」
るーと泣くカイ(泣くなよ)長い耳も垂れる。
哀愁を漂わすカイに、仕方ないな、と爆はそっと耳打ちした。
すると。
「………………」
ピン、とカイの耳が立った。絶好調だ、とハヤテは思った。
「……それもそーですね。はい。爆殿の言う通りにしますv」
……ハヤテは自分は結構目のいい方だと思った。
だとしたら、これは何だろう。カイの後ろに見えるぶんぶんと振られている尻尾は……
それはそうと、爆はカイに何を言ったんだろう、とハヤテが考えてると。
「爆殿には青色も似合いますが、ピンク系のも見たいですねv」
このセリフでさっきの爆のも解り、歳の割には結構純情のハヤテは赤面した。
そして、そんなハヤテの目の前でカイが、折角治まったのにまた真っ赤になった顔の爆にたこ殴りされていた。
横でデッドが何かを出したが、それは絶対に気にしてはいけないのだと、自分に言い聞かせた。
<END>
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