1.起きろー!
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俺の朝は騒がしい、というか激しい。
「起きろ!シンタロー!!」
ダン!と地面を蹴るパプワ。そのまま俺のボディにダイビング……
「させるかッツ!!」
ババッと身を起こした俺は落下物体をキャッチ!!
「フッフッフ、甘いぜ、パプ-----」
「あおん」
……………
勿論、パプワはあおんなんて鳴かない。
俺の手にあるのは、チャッピーだった。
そして。
「さっさと朝飯作らんかいッツ!!」
どげげしッ!!
パプワのドロップキックが、俺の後頭部に炸裂した。
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2.まずする事
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あ〜、痛ってぇなチクショー……
場所が場所なだけに、氷嚢が当てにくい!
「シンタロー!めーし、めーし!!」
「はーいはいはい」
俺の頭痛なんて何処吹く風で、パプワが膝を揺すってねだる。
こーゆー食欲最優先な所、ってちょっと見ててほのぼのするよな。(頭痛いけど)(凄く痛いけど)
さーて、籠を背負って外に出て。クボタくんの卵を貰って。
あぁ、その前に、朝起きたら。
「パプワ、おはよう」
まず、挨拶をしないとな。
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3.オマエが悪い!
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それにしても。
「パプワ、お前な」
「何だ?」
俺を見ようとすると、パプワは限界ぎりぎりまで首を上に向けなければならない。
で、苦しいだろうからと抱き上げると不機嫌に怒る訳だ。
まぁな、俺だって一定年齢以上過ぎると抱っこされるの嫌だったけど。
それはこの場ではさて置いて。
「お前な、もうちょっと穏やかに起こそうっていう気はないの?」
これでも俺は居たってフツーの健康体。低血圧なんて言葉にはお世話にならない。
だから、フツーに声をかければ、フツーに起きる。
まぁ、虫の居所が悪かったら眼魔砲ぶっ放すけど。
「何を言う」
パプワは偉そうに。
「ボク達は自分が起きても、オマエが起きるまで、毎日待ってやってるんだぞ?
それなのに、起きないオマエが悪い!!」
だから実力行使に出て当然!とパプワは主張した。
………俺が、悪いんかな〜………
誰かにジャッジさせようにも、残念ながら、この島に居るヤツは、全員パプワの味方だった。
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4.凄い
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朝食も無事済まし、俺は洗濯を終え、パプワはシットロト踊りを終えた。
では、昼食の材料探し兼散歩に出発。
「今日は魚にすっかな」
葉っぱに包んで蒸し焼きにしよう。きっといい香りがつく。
川についた俺は適当な枝を探し、それに安全ピンをつけた自分の髪数本を括り付けた。これで簡易釣竿の出来上がり。
「パプワー、何か虫探してくれよ。
ミミズなんかがいいな」
「よし、任せとけ」
意気揚々と出かけたパプワに、シミズくんは連れてくんな、と声をかけた。
今までに釣りをされた経験がないここの魚達は、こんな竿でも引っかかった。
今日は天気もいいし、メニューをちょっと変更して、ここで魚を焼いて食べてしまおう。卵もついでに適当に調理して。
「シンタローは、凄いな」
魚を半分食い尽くした頃に、パプワがふいに言った。
パプワが俺を凄いと?
「簡単に道具作って、沢山魚取ったな。あんなの初めて見たぞ」
……ま。そりゃナマモノ共の手にゃ、ああいう道具は作れないし、相応しくないな。
そういう事情の上でとは解ったものの……うん、嬉しい。
わ、久しぶりに照れたぞ、俺。
「いやー、まぁ……じゃ、お前今まで魚捕る時どうしてたんだ?」
タンノにでも頼んだとか?
「ボクはいつも手で捕っていたぞ」
「……………」
パプワさん、貴方の方が凄いです。
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5.手を繋ごう
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帰る時、砂浜を歩いた。何となく。
そう言えば、普通はジャングル探索の方が多いから、砂を歩いた事って思ったより無かったかもな。
ざし、ざし、と大きいとも小さいとも言えない足音が砂の中に消えていく。
「パプワ」
「何だ」
「手、繋ごうぜ?」
驚いたようにパプワが俺を見る。
だって、お前抱っこすると怒るじゃん?
だから。
「手」
「…………」
パプワがじっと俺を見て。
そうして、手を出した。
傍から見れば、俺は随分不自然な姿勢で歩いている。
パプワにまで手を届かそうとすれば、こうなってしまう。
腰が痛くなりそうな姿勢のままで、砂浜を歩いた。
隣のパプワが少し笑っていた。
今日食べた魚の味も、交わした会話も、歩いた不恰好な姿勢も、沈む足の感覚も。
時の流れが薄情に、俺から記憶を奪っても。
この指先だけは、パプワを忘れてしまわないように。
<END>
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