プレゼントは枕元に





 サンタが枕元にプレゼントを置くのは、やっぱり相手が寝ているからだろうか、なんて思ってみる。




 今日、クリスマスはシンタローにとってそれだけには収まらずに、最愛の弟と歳の離れた親友の誕生日という、とんでもないスペシャルデーだったりする。
 だもんだから、一ヶ月前からもうそわそわし始めて、プレゼントを選ぶための、パーティーの食材の、飾り付けのパンフレットが部屋の片隅に山となって積まれている。ちなみにそれを整理したり抑制させているのがキンタローだ。
 で、当日。
 シンタローは正真正銘、疑いようの無い、ぶっちぎりの。

 風邪を引いていた。




「お兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ……うん、」
「シンちゃん、そんなに憔悴して……!」
「それは今日のパーティーに出られない為の、精神的なものだ」
 キンタローが冷静に突っ込む。
「ま、なってしまったものは仕方ないさ」
 シンタローは力無く微笑む。
「来年だってあるからな。今日は大人しく寝てるよ。うつしちゃ悪いからな。
 だから、コタロー。お兄ちゃんの分まで楽しんでおいで」
「お兄ちゃん………
 うん!解った!今日は思いっきり楽しむよ!パプワくんとおおはしゃぎしてくるよ!」
 と、今まで握”られていた”手を離し、ウキウキと小走りでパーティー会場へと向かうコタロー。
 相手の手が無く、握ったままの手が虚空に浮かぶ。
「…………。
 すまん!コタロー!今のは強がりだ!本当は思いっきり心配して欲しいんだ!!パーティー中、ずっと気に掛けて欲しいんだ-----!!」
「寝てろ」
 ばしゃ!と、起き上がり追いかけようとしようとしたシンタローの顔に、キンタローが濡れタオルを被せた。




「はー、やっぱりシンタロー、来ないっちゃか」
 グンマから訊き、トットリがそう零した。
「士官学校の時は、39度の熱の時でも来たのにのぅ」
「次の日シンタロー以外のヤツが風邪になったべ」
 どうもあの時の目的はそれだったみたいだ。
「昔からちょっと間の悪い所があったんだよねぇ、シンちゃんは。やっぱり気の緩みかなぁ」
 シャンパン片手に暢気な声で言ったのは、マジックだった。
「あれー、お父様。シンちゃんの見舞いには行かないの?」
「あっはっは、勿論言ったさ。そうしたら「人の具合が悪い時に胸糞悪くなるその面見せんじゃねぇ!」って眼魔砲貰ってね」
「……それは……行きたくても行けられないっちゃね………」
 トットリは何と言ってよいか解らない。
「うん。さすがに4回食らっちゃったらね」
 行ったのか。懲りずに4回も。
「アラシヤマ……悪い事は言わん。命が惜しかったら、今日はシンタローの所へは行くな」
「……そーしますわ」
 普段なら人の言うことは鼻で笑い飛ばすアヤシラマだが、今日は大人しくコージのいう事は従おうと思う。死ぬにはまだ若いと思うから。
「ねー、そこの世界で一番結婚て言葉から縁の遠い4人組みー」
 実に可愛い声で実に可愛くないセリフが聞こえた。
「いたいけな子どもにプレゼント頂戴よ。言わないでも解ると思うけど、誕生日のとクリスマスのとは当然別で、一個3万円以下だったら打ち首だからね」
「暴君ネロの生まれ変わりどすか。あんさんは」
 それが当然、という顔で凄い事を言うコタローに、顔を引き攣らせてアヤシヤマが皆を代表して言った。
「それとこれも当然だけど。パプワくんのもちゃんと準備してるんだろうね。もちろん条件は僕のと同じだよ」
 おぉ、今年のコタローは友達の事まで考えるようになったか、とその成長をしみじみと感じる4人だ。相変わらず内容は壮絶だが。
「ちゃーんと用意はしちょるわ。ただしクリスマスと誕生日は併用。予算は5千円じゃ。これ以上はぬしの兄ちゃんにわしらの給与アップを言ってからにしてんかのぅ」
「電気椅子の用意!!」
「打ち首違うんだべか!」
「だって床血溜まりになるし」
「僕らの命はインテリア以下だっちゃ?!」
 血のつながりは無いが、この兄弟俺様な所は非常に似ている。必要以上に似ている。
「シンタローのやつ、やっぱ治せんかったのか」
 しょうがないヤツだな、とまるで年上のように言うパプワ。
「そうなんだよ。このメンバーで子孫が出来たら、末代まで祟るだろうね」
 パプワの呟きに応えるように、実現しそうな恐ろしい事を言うマジックである。
 しかしそうなった場合、マジックは除外されるだろう。何せ二代目のコタローが祟られる事になるから。
「で。パプワ君にコタロー。シンちゃんからのプレゼントだよ。
 今日じゃないと意味がないからって、最も信頼している私に託した訳だね」
 ちなみにその時、シンタローは血の涙を流していた。
 持っていた小包をそれぞれに渡す。
「わーい!テディベアだ!それに腕時計!」
 早速中身を確認し、おおはしゃぎのコタローだ。シンタローも草葉の陰で喜んでいることだろう(死んでません)。
「パプワ君は?開けないのかい?」
 いいんだよ、と言ってみるが、パプワは持ったままで。
「……後にする」
 綺麗にラッピングされた包みを持ったまま、コタローが呼ぶ方へと歩く。小さいパプワに、その包みはとても大きく、床に付いてしまう寸前だ。
 なんだか、小さいサンタみたいだねぇ、とマジックは思った。




「…………」
 朝だ。
 薬を飲んでから、あれから一度も起きなかったらしい。
 まぁ、自分が倒れた主な原因は、睡眠不足と過労だから、それを思えば当然だが。
 しかしそんな無茶をしたのも、昨日の為で。そして、それが原因で昨日寝込んだ。
 神様の存在を考えるのは、こんな時だ。身体は1つしかないから大事にしろ、と怒られているみたいだ。
 たっぷり睡眠をとったおかげで、気分はとても爽やかだ。
 26日の、何でもない日の朝だが、やけに日差しがキラキラしている。
「…………」
 それは、疲れが取れたからでもあり。
 そして。
「……お前、昨日ちゃんと歯ぁ磨いたか?」
 苦笑して、頬を悪戯するように突くと、パプワは小さく唸って布団に潜る。
 今年のプレゼントは、大きくて、けれどやっぱり小さくて。
 とても温かいものだった。




<END>





もちろんパプワくんの第一声は「朝飯!」ですけど。 
パプワくんは温かそうでいいなぁ。冬に一緒に寝たいです。あ、夏でも勿論いいです!

パプワへのプレゼントは……各自で!(えー!)
いや本当何をあげたらいいのか解らん!コタローは高値い物ならなんでもいいんだが!

マジパパは全力を注いでシンちゃんにサンタは居るんだよ、って思い込ませてたそうな気がする。
プレゼントを屋根の上に置いたりねー。煙突が無いからね、とか言って。
上に置いたのはガンマ団員の方々。下ろすのも団員の方々。