ボトム・オブ・ザ・ベット





 災厄や不幸というものは、場所、時間を弁えず突如降って沸くものである-----
 思わず、そんな哲学めいたセリフが過った。




「シンタロー!助けてくれろー!!」
「やなこった。失せろ!!!」
「帰れとは言わず失せろと来たべ」
 いきなりやってきたミヤギは、何故か大荷物だった。旅行鞄を肩に引っさげて、一体何の用だってんだ。
「知ってのとーり、ウチにはすでに扶養家族がいるので、君を迎える準備はないんだよ」
「オラだってンな命知らずな真似はしたくねーべさ」
 そんな言い方されると、俺に優しさの欠片もねぇみたいじゃねぇか。
 実はとミヤギが切り出し、差し出した物は。
「……何、コレ」
「ごらんの通りだべ」
 ある意味、男の1人暮らしの日常品とも取れるソレ。
 18歳未満は閲覧禁止の本&ビデオ。
 …………午後2時の、玄関口で太陽の日差し浴びて渡されるものじゃねぇな……絶対……
「かくまってくれ!!」
「アホー!何が嬉しくてこんなもんかくまらにゃならん!!」
 ぼかんと一発殴って、塩でもまこうとする前に、言った。
「あと1時間程で田舎のかーちゃんがオラの部屋へ来るんだべ」
 ミヤギの顔は、真剣だ。
 ……………………
 以上何も言わず、ただ黙ってぽん、と肩に手を置いた。
「よし、解った。でも、帰り次第さっさと受け取りに来いよ」
「恩に着るだ〜。あ、お礼と言っちゃなんだけど、見てもえぇべよ」
「見ねえよ!!!」
 振り向きざま、ンな事をおほざきにやがったミヤギに、植木鉢が直撃した。




 ビデオ3本、単行本5冊、雑誌7冊………趣旨を見ると、女子中学生ものばっかだな……まぁ、納得というか、なんと言うか……
 とりあえず、ブツがブツなだけに、そっと机の下に押し込む。
 上からバックが見えないのを、無意識にチェックした。
 あーぁ、ミヤギのやつ、後で絶対何が奢らす!!
 ぱん!と掌の拳を打ちつけ、俺はおやつ作りに入る。
 何せ、欠食児童1名抱えてるからな。気合いれねーと。
 エプロンを取り出し、ぎゅ、と紐を縛った。




 たっだいまー!と怒涛に帰ってきたパプワだが、その後作ってる俺の所に纏わりつく事はなかった。いつもこうだと、いいんだけどな。
 懐いてくれるのは嬉しいんだが、火や刃物扱ってるんだって事を弁えて欲しい。危ないったらねぇ。
 今日のおやつはチョコレートソース掛けのワッフル。カッティングした果物も添える。
 うん。いい出来だ。そこいらの店なんかより、ずっと見栄えいいよな。
「おーい、パプワ、おやつだぜー」
「…………」
 沈黙。
 珍しい。いつも必要以上に齧り付くくせに。
「何して----……あぁ、本読んでるのか。珍し………」
 凝固。
 何でって、パプワが見てるのって………!!そりゃ身長的にばっちり見えるだろうけども!!
「ななななな何て物見てるんですかアンタは--------!!」
 ミヤギから押し付けられたエロ本--------!!!!
「何をするんだ。まだ途中だぞ」
 本を掻っ攫われたパプワはご不満だ………って言うか!!
「途中もなにも最初から見るんじゃありません!!8年早い!!」
「見せて都合の悪いものを置いて置く方が悪い」
「あーそうですよ、どうせわたしが悪いんですよ!!
 て事で今見たことは忘れろ!全部忘れろ!特に俺の部屋にあったって事を重点に忘れろ!!」
「シンタロー………」
「何!」
「おやつ!!」
「……………」
 パプワが子供で助かったのかそうでないのか……この時点では、何も解らない。




「ところでシンタロー」
「どうした。おかわりか」
「それもあるが」
 ワッフルを2つ持って、渡す。
 もぎゅもぎゅと食べながら、言う。
「さっき見たの、だいたい似たような格好だったが、おまえああいうのが好きなのか」
 ゴヅ!!!!
「そんな勢いで机に頭ぶつけて、痛くないか?」
「は………ははは………」
 人間、脱力しすぎると、笑うしか出来ないもんだな、と。
 俺はかなりどうでもいい事を知った。




 しかし、悲劇はここで終わらない。
 ミヤギに例のブツを拳3発蹴り5発と一緒に返し、そんな事があった事も記憶に埋没しかけた、とある日。
 デパートの本屋で、ちょこちょこと歩いていたパプワが、くぃ、とズボンを引っ張り。
「ほら、お前の好きなヤツだぞ」
 って言って、成人向けコミック差し出したから。
 その後、ミヤギをぼこぼこにしておきました。
(どうしてくれる、パプワの中での俺のイメージ……)




<END>





現代設定での2人の生活、みたいな感じで。
シンちゃんは、ベット下のアイテムは……持ってるかどうか、微妙やな……弟命ですけん。

シンタローの為に、って事でキヌガサ君塗りたくったパプワが好きで出来たような話。
気を利かせたつもりなんだよネ。