断言します。
こいつとは何回生まれ変わっても、絶対友達にはなれません。
「でー?自爆技使ったのに、こうして生きていられるのは、誰のおかげっちゃねぇぇぇえええー?」
「……忍者はんが能天気雲で大雨降らせてくれたおかげどす」
「はー?聞こえんなぁー?」
「忍者はんが能天気雲で大雨降らせてくれたおかげどす!!」
「もっと全世界の人に聞こえるくらいの声で」
「〜〜〜忍者はんが!!!!」
「耳元で怒鳴んな。響くっちゃ」
「----------!!!!」
「おーい、治療した傍から怪我すんなー」
ぶちぶちぶちと堪忍袋が3つ程切れたようなアラシヤマに、シンタローがこそっと忠告した(はっきりはしないのか)
「ま、全員無事で良かったのぅ。
しかし何じゃぁ、こうしてみると何だかビジュアル系バンドのようじゃ」
包帯で巻かれた仲間達を見て、そんな事を言うコージだ。ミヤギなんて眼帯もしている事だし。
「良かった、か…………」
ふ、とシンタローは小さく笑った。
「そうだな。皆死ぬ事も無くて、帰って来られて。
俺は最後の挨拶もしないでパプワと別れるわコタローは眠ったまま目覚めないわで何だか一番の貧乏くじを引いていないでもないような気がすっけど、あぁ、ミヤギ。オメーらは気にしないでいつも通りにベストフレンズっぷりを披露してて構わねーからな?」
「穏やかな口調で遠回りに八つ当たりするのは止めて欲しいべ」
その気持ちは解らないでもないが殺気を込めた笑顔を向けるのは止めて欲しい。
ふと、コージが気付いた。
「そーじゃ。おぬし、目の様子を詳しく調べるから、高松から呼び出し食らっとったんと違うか?」
「……あ-------!そうだべ!早く行かな、何言われるか解ったもんでねぇ!!」
泡食ったように飛び出したミヤギ。ドアから出た直後にゴヅ!と痛そうな音がした。片目だから遠近が鈍ったのだろう。
まぁ、これから診察するのだから、ついでに治して貰えるだろう。
「あー、俺も包帯変えて貰おっかな。夏場は蒸れていかん」
「ワシもそうするかの……って、アレはどうする」
”アレ”と刺されたものは。
「命の恩人に対して、その態度はなんだらぁか-----!?」
「それらしく扱ってもらいたいんなら、少しはそれらしゅう振舞い!」
「薄情者!」
「童顔!」
「根暗!」
「能天気!」
シンタローは少し考え、
「放っておこう」
ごくシンプルな答えを出し、コージもそれを拒む理由は、何も無かった。
2人がそれぞれ自分の大事な人(トットリ→ミヤギ。アラシヤマ→シンタロー)が居ない事に気付いたのは、肺の酸素と罵詈雑言が尽きた時であった。
「うわーん、ミヤギくん置いていくなんて酷いっちゃよ!」
「シンタローはーん。なしてわてを置いて行きはるんやー」
2人はほぼ同時に言い。
「 お前 だっちゃ
なら置いていかれて当然
あんさん どす 」
これも同時に言った。
ギンと眼に力を入れて互いを睨む。視線に力があるのなら殺す!と言わんばかりの勢いで。
しかし、そんなやり取りも続かなかった。喧嘩なんて、ギャラリーが居なければ盛り上がらないものなのだから。
そして、此処でトットリも、ミヤギが呼び出しを申し付けられていた事を思い出す。ミヤギの場合、怪我した場所が場所だ。大事にならないといいが。
一瞬で不安に染めた表情を浮かべ、診察室へ向かおうとするトットリ。
タイミング的に、そのセリフは呼び止めたようにも見えた。
「もっと非難されるかと思っとりましたわ」
「……何が?」
意図の解らない発言を、そのままにしておくには気持ちが悪い。トットリは問い返した。
「自爆技使って。正直、生きている今が信じられまへんわ。
本当なら、全員死んでたんでっせ?」
「そんな事言えるのも、生きてるって事だっちゃ」
中々伺った事を言う。
「死ぬのが怖くないって言ったら、それは嘘だっちゃよ。
でも」
………でも?と心で反芻して、言葉の続きを待っている。
「仲間が命賭けて決めた事に、僕ぁ反対なんてしないっちゃ」
「………………」
言った後、トットリは、ん?何で僕がフォローみたいな事言わんとあかんがや、と言いたげに首を捻って、部屋を出た。
そうして、室内にはアラシヤマ一人となった。
アラシヤマは徐に、両手で額まで多い、それをずりずりと頬を伝い、顎まで下げた。意味の無い行為だ。
「……”仲間”、どすか………」
断言します。
こいつとは何回生まれ変わっても、絶対友達にはなれません。
「凄い殺し文句や」
しかし。
赤の他人で終わる事も、無いと思います。
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